297発目 出社時間が早まる話。


ライナーノーツ

女の子が二人、ひそひそとやってる。

チラチラと『そいつ』の方を見ていることも

一人がもう一人の方の耳元で

ヒソヒソ話していることも

全て気づいていたよ。

 

もちろん、視線は全然違う方に

向けていたが、全神経と意識は

彼女たちに向けてたよ。

 

何かな?自分に何の用かな?

 

その時の『そいつ』ときたら

他人よりも少しだけ自意識が

過剰に分泌されてるもんだから

きっと、告白か何かだと思ってるんだよ。

 

愚かだよね?

 

チラリと視線を彼女たちの方に

向けてみるよ。

誰だか確認するためにね。

 

そして、その後はゆっくりと

伸びをしてみるよ。

 

そうすることで、彼女たちが

話しかけやすい状況を作ってるつもり

なんだよ。

 

愚かだね?

 

あ、ここで忘れちゃいけないのは

咳払いだよ。

1回だと少なすぎるし

3回だと多いよ。

 

この場合、2回が正解だよ。

 

いや、正解だと思ってるよ。

 

愚か者だろ?

 

伸びをしたついでに彼女たちの方に

半歩だけ近づくよ。

でも視線は遠くに向けたままだよ。

 

愚かすぎだろ?

 

あれ?おかしいな?

と思い始めたよ。

だって、一向に彼女たちが

話しかけてこないからさ。

 

愚かを通り越してアフォだろ?

 

思い切って、彼女たちの方に

視線を向けてみるよ。

この際だから、目が合っても

仕方ないという判断を下したよ。

 

向いた方向には誰もいなかったよ。

 

厳密にいうと駅員しかいないよ。

 

アフォというよりクズだね。

 

照れくさそうに電車に乗り込むよ。

 

そして、二度とこの時間帯に

駅を利用しないことを

自分だけに誓うよ。

 

こうして『そいつ』がいつもより

早く出社することになるよ。

 

クズと言うかゴミだね。

 

ソンナコトナイヨッテイッテネ

 

合掌

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