何かを話し始める前に 「面白い話があるんだけどさぁ」 と言う人の気が知れない。
その後に続く話が面白かったためしがないからだ。
しかも、その話が自分の体験談ならまだしも、誰かに聞いた話しだったり、又聞きの又聞きだったりするもんだから、より一層、面白くない。
「ねえねえ、聞いてよ。昨日さ面白い話聞いたんだけど。」
「どうした?」
「ナオちゃんって知ってる?」
「知らん。」
「その子がね、豆腐食べようとして、醤油と間違ってソースかけたんだって。チョーウケル。」
・・・・・・・スベってますけど。
この話のミスは3つある。1つ目は最初に述べたように「面白い話」と自らハードルを上げたこと。2つ目はナオちゃん知らないのに、そっちのけで話が進んでいくこと。3つ目はオチを急いだこと。
これらを踏まえて、ライナーノーツならこの話がどうなるか、見てみよう。
「ねえねえ、あのさ、ナオちゃんって知ってる?」
「知らん。」
「あの私の友達でさ、目鼻立ちがやたらクッキリしてて彫が深い子おるやん?」
「ああ、あの外国人っぽい子?」
「そうそう、あの子さ中学のときのあだ名が南米やったらしいよ。」
「すごいあだ名やな。で、その南米がどうしたん?」
「先週末やけど、実家に帰っとったんて。」
「実家ってどこ?」
「ブラジル。」
「嘘付け。」
「春吉とか清川とかそのへん。」
「嘘かい!ま、嘘やろうけど。で、それがどしたん?」
「晩御飯のときにさ、豆腐が出たらしいんよ。」
「うん。」
「ほんで、醤油と間違ってサルサソースかけたらしいよ。」
「南米やん!」
「それ見たお母さんがさ、こう言ったって。」
「なに?」
「Nossa!」
「何それ?どうゆう意味?」
「英語で言うところのoh my god . ポルトガル語らしいよ。」
「南米やん!」
「ほんで、いい歳して帰りにお母さんからお小遣い貰ったらしい。」
「なんぼ?」
「200ペソ」
「南米やん!」
と、まあこれくらい盛ってくれれば成立するのにね。
ウソバッカリ
合掌