血なまぐさい事件が増えている気がするが、気のせいなのか?
私が無事でいられるのは、ただの偶然で、一歩違えばあの忌まわしい事件の被害者だったとしても不思議ではない。 そう考えると感謝しないとならない。 誰に?
誰に感謝すべきかは分からないが、もし誰かが出血多量で、それは事件に巻き込まれたケースでも、手術中に血が足りなくなったケースや、事故に巻き込まれたケースなど、様々な場面が想定できるのだが、「おい!B型だ!もっと持って来い!」と担当医が叫び、看護師が急いで輸血の準備をする場面を想定すると、私がやるべきことは一つだ。
そう。献血です。
いろいろ想像した結果、私の血は病院に運ばれ、しかるべき方法で保管され、そして輸血される。その結果、輸血された人は一命を取り留める。
であれば、私は献血をすべきだ。 I should be a blood donor.
駅前の歩道が広くなった部分に献血のバスが停まっていた。 「今ならアイスクリームを差し上げます。」 という謳い文句に惹かれたのではなく、前述のようなことを想像したから私はバスに乗り込む。
事前にアンケートにお答えください、と係りの人にバインダーを渡される。
同意書みたいなものだな。 過去に貧血になったことはないか?とか。 注射を打って気分が悪くなったりしたことがないか?とか。
ない。一切ない。 ナッシング。
大丈夫です。私こそが献血にふさわしい男です。 血の気が多いので少々抜いても困りません。
一番下の欄に 「今回、献血をしようと思った理由に一番近いものは何ですか?」 とある。
選択肢が3つあったが、私が選ぶべき選択肢がなかった。 きっと、私のような正義感や義憤に駆られて献血する人は過去に例を見ないのだろう。
ここで、私は正義感を振りかざし 「私が献血をする理由にふさわしい選択肢がないぞ。私は未だ見ぬ誰かの命を救うためにここに参上した!」 などと叫んだりはしない。 そんなことをしたら警察を呼ばれるか、ここから一番近い大きな病院に連れて行かれるだろうからな。
仕方ない。 人生に妥協はつき物だ。
私はそっと3番に丸印をつけた。
「③アイスが欲しかった。」
違うぞ!
決して違うからな!
私は未だ見ぬ・・・・ え? 二つもいいんですか? ああ、今日は暑いから。
じゃ、じゃあ遠慮なく
イタダキマス
合掌