91発目 タクシーの話。


舞台IMG_1606

プロフェッショナルとは何か?

それは、顧客のニーズに応える、もしくは
応えようとする姿勢だ。

その日、タクシーの運転手は
私にこう語った。
『いやあ、あの時は参りました』

夕方か夜か?と言う時間帯は薄暮といい
運転手には視界が悪くなる魔の時間帯だ。
気をつけて運転するのはもちろんのこと
とにかく、事故をせずに、渋滞を避け
また持ち場に戻り、一人でも多くの客を
拾いたい、そんな心理が働く時間だそうだ。

博多駅から一人のお客さんを乗せた。
書き入れ時だから、ささっと行って
さっと戻って、太い客を掴むぞと
渋滞を避け、裏道をぶっ飛ばしていた。

後ろの客が話しかけてきたそうだ。
『運ちゃん、飛ばすね?
どれくらいで着くかな?』
それ来た!とばかりに自慢げに
運転手は答える。
『通常だと30分くらいですが
私くらいになると15分ですよ!旦那』

それからしばらく黙っていたお客は
ぼつりと、そんなに急いでないけどなぁ
とつぶやいた。
嫌な予感がしたのは確かだが
早く持ち場に戻りたい一心で
さらにアクセルを踏み込む。

目的地に到着し、支払を受け取り
後ろのドアをあける。
車を降りながらお客さんが、また
つぶやいた。

『今日は非番だから勘弁してやるが
次見つけたらしょっぴくぞ』

ガビーーーーン

合掌

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