313発目 街のクズ作戦の話。~めぐりあい宇宙編~


星の屑作戦

待ち合わせ場所に着いたのは

約束の時間より1時間も早かった。

 

オオツカは20年間もの長きに渡り

彼女のいない生活をしていた。

 

実際は彼女を作ることを

意識しだしたのが中3だから

厳密に言うとイナイ歴は5年だ。

 

ただ、生まれて一度も

彼女が出来たことがないので

気分としてはイナイ歴20年らしい。

 

オオツカから相談を受けたヒロシは

一肌脱いでやろうと立ち上がった。

 

携帯電話などない時代の話だ。

 

ヒロシは小さなアドレス帳を出し

丁寧にページをめくりながら

数箇所に電話した。

 

『うん、誰か彼氏が欲しいって子、

おらん?』

 

数件目でヒットした。

ケイコという女の子だ。

 

『私の友達のバイト先の子で

探してるって聴いたけど。』

 

『よっしゃ、紹介してくれ!』

 

というような流れでオオツカは

今、待ち合わせ場所に立っている。

 

夏も終わり、秋の始まりを

思わせるような、少し肌寒い

夜だった。

 

段取りはこうだ。ケイコの友達

名前は確かアヤ。

アヤとそのバイト仲間の女の子を

ヒロシが迎えに行く。

 

待ち合わせ場所でたたずむ

オオツカの前に女の子を

連れて行き、ヒロシはアヤと

頃合を見計らって辞去する。

 

あとはオオツカと女の子が

二人っきりになって、親密になる。

 

いたってシンプルな計画だ。

 

この計画を練るに当たって

別チャンネルで同時進行している

もう一つの計画があった。

 

計画の名前は『V計画』だ。

 

作戦を命じられた戦士達は

ケンジ、オオヤ、そしてヤマグチだった。

 

ヒロシは3人にV計画の概要を

説明し、最後にこう付け加えた。

 

『作戦名V計画は暗号名で

ガンダムの星の屑作戦に

ちなんで「街のクズ作戦」と呼ぶ。』

 

こうして水面下で進行される

街のクズ作戦は本日実行されることになった。

 

街のクズ作戦は準備にゆとりが

なかった。ケイコから紹介された

アヤが思ったより段取り良く

手配をしたため、実行日が

オオツカから相談のあった

翌週になったからだ。

 

たったの1週間で3名の戦士達は

準備をする必要があった。

 

まず、ケンジが用意したのが

このV作戦の名前の由来となる

ビデオカメラだ。

 

オオヤはバイク、ヤマグチは

ピンマイクとイヤホン。

 

戦士達は毎晩、ヤマシタのアパートに

集い、夜中まで打合せを重ねた。

ヤマシタは文句も言わず

会合場所として部屋を提供した。

 

そして作戦決行当日。

 

ヒロシが待ち合わせ場所に

アヤとアヤの友達を連れてきた。

 

アヤの友達はミカと名乗った。

 

ミカは薄手のオレンジのカーディガンに

花柄のミニスカートという

いでたちで現れた。

 

オオツカはその時、

『これは無理じゃねぇか?』

と感じたそうだ。

 

ミカは周囲の人が振り返るほどの

美人で背もスラリと高く、茶色く

染めた長い髪からは良い匂いが

していたそうだ。

 

少しはなれたところから

街のクズ作戦を実行していた

戦士達からも感嘆の声が

もれたくらいだ。

 

すっかり日の暮れた博多駅で

これから行われるV計画、通称

『街のクズ作戦』の開始の合図は

ヒロシが右手を上げて開始された。

 

戦士達に緊張が走る。

 

オオツカの恋の行方やいかに!

 

ジカイニツヅク

 

合掌

 

 

 

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