とまどいとは想定してないときに
得てして起こりうる。
今朝の通勤電車での出来事だ。
つり革を掴んで、電車のゆれに
身を任せる。
私の前に座る女性は、
一心不乱に携帯電話を
操作している。
電話の画面も彼女の顔も
見えない。
ただ、うつむいた彼女の前髪越しに
にゅっと突き出た下唇だけが
妙に目立つ。
そういえば、昨日の帰宅時に
途中でコンビニに立ち寄って
割り箸を余分にもらったなと
思い出す。
ああ、あの下唇にこの割り箸が
乗るかどうかを試したい。
そうゆう衝動に駆られた。
しかし、と考える。
見ず知らずの人に
いきなり割り箸を下唇に乗せられたら
警察に通報しやしないか?
俺なら通報するか?
するな。
ということで思いとどまる。
でも、どうしても試してみたい。
あんなに突き出てるんだから
きっと乗るはずだ。
黙って割り箸を手渡すと
彼女はどんな反応をするか
シュミレーションしてみる。
『なんですかこれ?
結構です!』ってなるな。
まあ、断るわな。
意味が分からないから。
でも、黙って手渡すだけなら
警察に通報はされないだろう。
意を決して電車を降りるタイミングで
彼女に割り箸を手渡してみた。
彼女、うつむいたままで、
『あ、ありがとうございます。』
ん?
あれ?
全然、想定と違う。
ツカウノ?
合掌