193発目 教え諭す話。~コンパ前夜~


ライナーノーツ

人間の欲求は5段階あると、
アメリカの心理学者アブラハム・マズロー
は説いている。

ただ、我々の住む日本のような
先進国では第3段階までは
満たされているので、多くの人が
これから満たすべき欲求は
第4段階と第5段階になる。

尊厳の欲求と自己表現の欲求だ。

尊厳の欲求には二つのレベルが
あるのだが、その低いほうのレベル
として以下のようなものがある。

人に認められたい、つまり
地位や名声を得たい、人から
尊敬されたい、注目されたい
という欲求だ。

コージという友人がいた。
中学一年のときに
学校の下駄箱で
鞄がぶつかったという
理由で殴り合いの喧嘩を
したことがきっかけで
以後、彼が亡くなる24歳まで
仲良くしていた。

コージは小学校のときに
妹と二人まとめて
両親に捨てられ
施設に入っていた。

中学卒業後、地元の
公立高校に進学したが
夏休みを迎える前に
中退し、そのまま地元の
暴力を生業にする企業へ
就職した。

大学進学を機に住み慣れた
故郷を飛び出し、博多へ
引っ越した私は、コージとは
相変わらずの関係を
続けていた。

コージは就職を機に
コンプレックスだった
薄い眉毛に墨を入れ
背中には絵を描いた。

髪型は見事なパンチパーマで
普段着はジャージ、
歩き方は猫背で蟹股。
誰がどう見ても
その筋の方だった。

そのコージから、電話があった。

『サトル、コンパっちゃ
そげん楽しいとや?』

『コンパによるけど
なんや、ヤクザもコンパ
するんか?』

『大学生気分を味わいたい、
コンパを段取りしてくれ』

私は少々気が乗らなかったが
仲の良かった短大生に
連絡し段取りをつけた。

コンパの前日、私の
アパートに泊まりに来た
コージは私に詳細の
取り決めを約束させた。

まず、身分だが
国士舘大学に通い
体育教師を目指している、

たまたま妹の結婚式で
帰省している。

大学では空手部に所属
しており、カラオケは
郷ひろみが十八番だ。

もろもろの偽情報を
頭に叩き込み翌日に備えた。

私は、こんな嘘が
通じるのか?と不安で
しょうがなかったが
言うことを聞かないと
いくら仲良しとはいえ
相手はヤクザだ。
怒らせると怖い。

一通りの打合せが済むと
食事がてら明日のための
カラオケを練習しに行こうと
外へ繰り出した。

私の不安はますます
膨らみあがり、前日で
あるにもかかわらず、
すでに胃がキリキリと
痛み出していた。

話は戻るが欲求の第1段階から
第3段階はこうだ。

①生理的欲求→②安全欲求
→③社会的欲求

①は本能的な欲求で
例えば食事や睡眠、排泄などの
欲求だ。
そんで②は安全で安心できる
生活をしたいという欲求で
例えば経済的な安定性や
健康、安全な家などがそうだ。
③に関しては所属欲求や
帰属欲求、愛情欲求と
いわれるもので、企業や
学校などの組織に所属したいとか
誰かに愛されたいと
いったものだ。

先に書いたが先進国では
この3つはすでに満たされている人が
大半を占める。

にもかかわらず

コージに関しては、①は良いが
②に関してはまるっきりだ。
確かに危険極まりない職業だ。

彼は②をすっとばして
第4段階である尊厳欲求に
チャレンジしようとしてるのだ。

話が難しくなったので

キョウハココマデ

合掌
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