182発目 過ぎたるは及ばざるが如しの話。


ライナーノーツ

事務所の近くに交通量の比較的少ない
横断歩道がある。
しかし、その向こうは大博通りと言って
博多でも一二を争うほどの大通りだ。

幅は4メートルほどなので、歩行者信号が
赤でも渡ろうとする人は多い。

私はそれでも赤信号の時はきちんと
止まって青になるのを待つ。
なぜならそこで信号無視をして
事故にあった現場を何度か目撃しているからだ。

その日は、誰も信号無視をしなかった。

私が立っている方と反対側に
落ち着きのなさそうな老人がやってきた。
信号待ちをする人垣をかき分け
最前列に出てきた。

大きく身を乗り出し右側を見る。
そのあと、左側を見る。
もう一度右側を見る。少し背伸びをしている。

あぁ。こりゃ信号無視するな。
しかし慎重なジジイだな。
私はそう思っていた。

老人はさらに数回左右を確認し
意を決したように車道へと一歩、
踏み出した。

ドスン。

老人の右側から来た
車が彼を跳ねた。

老人は『うわ!』と叫び、転んだ。

しかし、すぐに起き上り逃げて行った。
私の横を通り過ぎる時に
老人はブツブツつぶやいていた。

『ちきしょう。あれだけ見たのに』

アカハ、トマレ

合掌

“182発目 過ぎたるは及ばざるが如しの話。” への1件の返信

  1. 跳ねられて当然だよ。交通マナー守らないんだもん。だけど、人と車じゃ車が悪い事になるよね?
    ったく

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