117発目 勇気ある少年の話。


舞台IMG_1606

バレー部で汗を流してたのは
中学生の頃だ。
体育館が使えない日はもっぱら
学校の外を走ることに終始する。
私のいた中学校の周りは
北九州市が指定しているマラソンコースが
あり、景色もよく、様々なスポットがある。

5kmのコースを走っている途中で
後輩が後ろから全速力でやってきて
私にこう言った。

『山の中腹に洞穴がある』

14歳くらいの少年達には
この『洞穴』というワードが
とても魅力的に感じた。

あまり戻るのが遅いと先生に
怪しまれるから、一旦帰って
部活が終わってから行ってみよう、
ということになり、その日は
一旦学校へ戻り、何食わぬ顔で
部活のメニューをこなした。

着替えを終え、部室を出る頃には
7時を過ぎてたと思うが、
準備に抜かりはなかった。

懐中電灯がなかったので
使い古しのTシャツを丸め
棒にくくりつけ、ジッポオイルを
もって行った。何故ジッポオイルが
あったかって?それは聞かないで欲しい。

さて、目的の洞穴についた頃には
あたりは日が暮れて、漆黒とまでは
いかないが、闇に包まれていた。

見当をつけて斜面を歩いてると
お目当ての洞穴が見えてきた。

即席たいまつに火をつける。
あたりに明かりがパッと灯る。

さぁ、誰が行く?

ボクが行きます。

おおお行ってきたまえ。

少年はたいまつを右手に持ち
心持ち前かがみになりながら
『洞穴』の中へ入っていった。

たいまつの燃える音なのか
ジリジリと嫌な音がする。

穴の中から少年がこうさけぶ。
『行き止まりですね、何もない』

やがて穴から出てきた彼の背中には
火であぶられた無数のムカデが
乗っていた。ジリジリはこの音だったか。

断末魔の叫び声とは
ああゆうのを言うんだろう。
少年以外の全員が恐れ慄いた。

少年は、ムカデなんてたいしたことない
といいながら素手ではらったが
全てを落とすことは出来ない。

結局、背中の数十箇所を
ムカデに刺され、救急車を呼ぶ羽目に
なった。

後日、先生や病院から事情聴取を
されたが、うまく説明が出来なかった。

何故そんなにムカデだらけのところに行った?
何故そんな時間にムカデに刺された?

そう言われても、ムカデがいるって
知ってたら行かなかったよ。

1週間後、退院してきた少年は
我々にこう言った
『もう一回行きませんか?』

バレー部の誰もが彼のことを
『勇気ある少年』と呼ぶことになった。

ニドト イカナイ

合掌

“117発目 勇気ある少年の話。” への3件の返信

  1. アハハハハ(笑)ムカデで思い出した(笑)
    実家にいる頃、中学生の時に、夜布団に足を入れた瞬間、チクッとしたから、布団をめくったらムカデが居た。声にならない声で近くにあった雑誌でボッコボコにしたっけな……(笑)(笑)

  2. ピンバック: 186発目 長い前置きの話。 | ライナーノーツ

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