676発目 「だに」をスルーした話。



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特にそれを目当てにしていたわけではないが、近くまで行ってみて「ここ知ってる!」ってなったので寄ってみた。 長野県飯田市にある「天竜峡」だ。

 

小学生の頃、社会の時間で習ったのを思い出した。まさか35年の月日を経て、自分が来ることになろうとは、夢にも思わなかったが、これも何かの縁だろう。

 

一日に6本の運行を行うライン下りは、JR飯田線の天竜峡駅から徒歩で5分くらいのところにある乗り場から乗れる。

 

「地元の人は乗り場と言わずに港って言うんですよ。」「へ~。そうなんや~。」

 

大人2,900円という値段設定に文句がないか?と言われれば答えは「文句は大いにある」としか答えようが無いのだが、払わないと乗れないので仕方なく払う。

 

しかし気をつけて欲しいのは、割引サービスがあるという点だ。 JR天竜峡駅を下りると踏み切りの脇に天竜峡再生館という施設がある。分かりやすく表現するなら「観光案内所」である。

 

ここで薄い黄色の紙にプリントされた割引券をもらうべきだ。たった300円の割引ではあるがバカにできないぞ。

 

そしてあなたがもし夏場に行こうと考えているのなら、始発の9:20発か、若しくは最終の15:20に乗るべきだ。そうしないと、直射日光にさらされながら川流される羽目になるぞ。我が家は最終便の15:20に乗ることにした。割引券より更に薄い黄色のライフジャケットを着る羽目になるが、それもルールだ。我慢しよう。

 

時計を見ると出港までまだ50分ほど時間がある。観光案内所のおばさんに尋ねてみた。どこか時間をつぶせるところはないか?と。

 

「だったら、遊歩道を歩いてみるだに。そこの吊橋までなら往復で20分くらい。ゆっくり遊歩道を1周したって小1時間だに。」

 

私は出来れば歩きたくない旨をそっと伝える。「だに」については触れない。

 

「だったら、この上に歴史資料館があるだに。無料だに。」

 

資料館なんかでつぶせる時間はどう見積もっても10分くらいだろう?他にないか?と尋ねる。「だに」については触れない。

 

「だったら、乗り場の横にりんご足湯があるだに。」

 

乗り場って言うんかい!港じゃないんかい!

 

まあいい。とにかく意見もまとまったことだし、早速、歴史資料館を5分ほどで見てまわり、橋の向こうにある足湯へと向かおう。案内所のおばさんに言われたとおりの場所の手前には、今から我々が下ろうとしている天竜川が見えた。

 

足湯には先客が一人いた。年配の女性だった。

 

彼女は後から入ってきた我々に馴れ馴れしく話しかけてきた。

 

「何人で来たの?4人?あらあら、じゃあ、おばちゃんはこっちにずれようかしら?お母さんの横がいいものねぇ?」

 

うちの娘は、身なりの汚い人に話しかけられると黙り込んでしまう癖がある。このときも黙り込んでしまった。無視されたおばちゃんと我々との間に気まずい空気が流れた。その空気をかき消すかのようにおばちゃんは私に向かって話しかけてきた。

 

「あのね、私は4月からほとんど毎日ね、ここに来てるの。」

 

「ほう。4月から?」

 

「そうなの。なぜだか分かる?」

 

もちろん分からないし、知りたくもない、と言わないだけの礼儀は持ち合わせている。私はゆっくりと首を横に振る。

 

「神経痛なの。」

 

なるほど。湯治が目的なのか。私は愛想よく言葉を返す。

 

「どこか痛い所があるんですか?」

 

「腰の上のあたりがねぇ・・・」

 

 

え?

 

 

腰の上?

 

 

その場所が神経痛なのに、足湯に来てるの? 4月から? ほぼ毎日?

 

無駄や~ん

 

おばちゃん、気がついてないな、教えてあげよう。その時、私の妻が横から私のわき腹をつついた。振り返ると、とても威圧的な目で私を制圧しようとしていた。言いたいことは直ぐに分かった。つまり「余計なことは言いなさんな」ってことだろう。私も妻に怒られるのはイヤなので、ここはぐっと堪えて黙っておくことにした。

 

「雨が降った日と台風の日は流石にこなかったけどね。」

 

おばちゃんは尚も話し続ける。私は何か言わなきゃと思い、口を開いた。

 

「どうですか?良くなりましたか?」

 

おばちゃんは眉間に皺を寄せ、こう答えた。

 

「もう4ヶ月もなるのにね、あんまり良くはならないね。歳も歳だしね。」

 

いやいや、おばちゃん、治るわけないやん!膝の下までしか浸かってないもん。腰まで浸からんと!

 

そう言いたい。 突っ込みたい。 でも妻の視線がきつい。 黙っとこう。 我慢だオレ。

 

妻が尚も私のわき腹をつついてきた。 何だよ! 我慢しただろ! 文句ないだろ! 私は妻を振り返った。妻は笑いを堪えた顔でそっと指差した。

 

妻の指差した方角には一枚の看板が貼っており、そこに温泉の効能が記述されていた。

 

婦人病、肩こり、痛風、擦り傷、切り傷、筋肉痛、打ち身、捻挫。

 

神経痛、ないやん!

 

あと、肩こりって何なん? 足湯なのに肩まで浸かれってこと? ってゆうか、おばちゃん神経痛を治したいなら、ここじゃないよ。私は妻をそっと見た。妻は黙ってうなづいた。

 

よっしゃ!ゴーサインが出た!突っ込むぞ。

 

「おばちゃん、あれ見てん。効能の中に神経痛って書いてないよ。ここに入っとっても腰の神経痛は治らんよ。」

 

おばちゃんはとてもとても驚いた顔で看板を見ていた。しばらく無言だった。そしてそのまま無言のまま、出て行った。がっくりと肩を落として去っていった。

 

私と妻は堪えていた笑いを一気に爆発させた。

 

「あ~、笑った。」

 

すると先ほどのおばちゃんが戻ってきた。 手にはコーヒー牛乳を持っていた。

 

「あ、これ、お子さん達に。」

 

「あ、すいません、いいんですか?」(あなたの後姿をみて爆笑していた私達にくれるんですか?)

 

「うん、大事なこと教えてくれたからね。お礼に。」

 

「ありがとうございます。」(気がついてないことに爆笑したんですよ。)

 

ふたたび、おばちゃんは肩を落として去ろうとした。その後姿に気がついたのだが、右足を少し引きずっていた。

 

「あれ、右足、どうかしたんですか?」

 

「ああ、今年の初めに階段でつまづいてねぇ。歳だに。歳。」

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

効いてないや~ん!

 

打ち身にも捻挫にも効いてないやん!どうなっとるん?この温泉。

 

そしてここでも「だに」については触れない。

 

 

ホウゲンヲキクトウレシクナル

 

合掌



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