637発目 大阪で見かけた靴底のない男とビジネスホテルと間違えてラブホテルを予約していた男の話。


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「自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述」

 

小学生の頃の話だ。 図書室で本を借りようと物色していた。 そして私の目に飛び込んで来た1冊の本がデフォー作の「ロビンソンクルーソー」だった。

私はその本を小脇に抱えカウンターに持って行った。 司書の女性が私に「これは面白いわよ。」と教えてくれた。そしてさらにこう付け加えた。

 

「この本は本当のタイトルはもっと長いの」

 

そう言って冒頭の「自分以外の・・・」と本当のタイトルを教えてくれた。

 

あのダラダラと長い本当のタイトルを知ってしまった私はこの本を読む気が失せ、結局46歳になった今もロビンソンクルーソーは読んでいない。

 

だって、タイトルで粗筋が分かっちゃうんだもの。読む気が無くなるよね。

 

 

ところがライナーノーツはデフォーとは一味違う。 今日はタイトルが長いが、それが粗筋を指しているとは限らないぞ。読者を裏切ることに情熱を燃やしている筆者のことだから意外な展開が待っていることだろう。

 

Booking.comというサイトをご存じだろうか?

世界中の宿泊施設を予約できるサイトだ。行先を指定するとその都市での最安値の宿泊施設を紹介してくれる。世界最大級の宿泊オンライン予約システムだ。

 

出張の際は、いつもなら楽天トラベルでホテルを探すのだが、先般の大阪出張ではホテルが見つからず、仕方なくBooking.comを利用した。 ところが検索したとたんに相当な数の宿泊施設を表示してきたのには驚いた。楽天トラベルが載せてない施設もたくさんあるし、安いのだと1,400円というのもあった。

 

ただ、よく見るとシェアハウスだったり4人相部屋だったりと、ビジネスユースとしてはちょっと遠慮したくなる物件ばかりだった。

 

画面をスクロールするとちょうど良い物件があり、値段も8,900円と手ごろだったので予約した。

 

で、当日だ。

 

指定された住所をマップアプリで表示しながら歩いて行くと見えてきた建物はなんと!ラブホテルだったのだ。

 

はぁ。 タイトルで言っちゃってるもんなぁ。ビジネスホテルと間違えてラブホテルを予約した男って言っちゃってるもんなぁ。これ以上、どうやったら面白くなるんだよ・・・・裏切れないよ。

 

気を取り直して、待ち合わせの場所に向かった。梅田地下街にある泉の広場だ。 時間には少し早いので噴水の淵に腰掛けて周囲を観察してみた。

 

すると右の方から大きな声で叫んでるおじさんがいた。

 

「なんやトランプいうんが大統領になったらしいな?そやけど、そんなん関係あれへん。 わしはなぁ、見ての通り、地に足付けて地道に生きていくんや!」

 

私と同じように噴水の淵に座って足を組んで座るそのおじさんは、言っちゃ悪いがホームレスにしか見えなかった。おじさんの正面に立つ人がクスクス笑ってるので、私もそっとおじさんの正面に移動してみた。

 

「ええか!大事なんわな、あせらんことや!地に足付けて地道に生きてればいつか道は開けるんや!」

 

とても良いことを演説しているおじさんの靴は底がなかった。 そうか。 おっしゃる通り地に足がついてるな、と・・・・・・・

 

ダメだ。 だってタイトルで言っちゃってるんだもん、靴底のない男って。オチの前で分かっちゃうよ、読者が。 どうやったってどんでん返しもなければ裏切りもできないよ。

 

教訓。

 

長いタイトルの話は読まなくても内容が分かる。

 

マタヒトツカシコクナッタ

 

合掌

 

 

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