625発目 世界に二人きりの話。



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昔の仲間に会った。 20年ぶりだった。 オレが上京して最初に出来た友達だ。 みんなそれぞれが思い出話を持ち寄って、3時間があっと言う間だった。

 

「そういえばよ、あん時のこと覚えてる?」

 

「あん時?」

 

 

それはオレが会社を辞め故郷の福岡に戻るって決めた日に開いてくれた送別会の席だった。 その時もこのメンバー4人で集まったんだった。

 

場所はやっぱり居酒屋だったと思う。 今日はどうだったとか、入社した頃はこう思ってたのにとか、誰かの噂話や悪口なんかで盛り上がってたわけ。

 

そうして2時間くらい経った頃かな? 誰かが言い出したんだ。

 

「この世界に自分ともう一人のたった二人だけになったらどうするべき?」

 

これには全員が考え込んだ。 条件が不足しすぎている。

 

「相手によるぞ。」

 

「見ず知らずの女。」

 

「見ず知らずか~。」

 

酔っているからこそだろう。 ありもしない話なのに、全員が真剣に考え出した。

 

「見ず知らずはきついねぇ。」

 

「まずは、あれじゃね? 挨拶じゃね? 初めましてって。」

 

「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないよ。世界に二人っきりなんだから。」

 

「けどさ、その子と仲良くやらなきゃ独りぼっちになるぜ。」

 

「えっと、その女のルックスとかスタイルはどうなん?」

 

「どうしよっか。え~っとね、じゃあ・・・」

 

出題者は更に条件を付け加える。

 

「ブスね。 かなりのブス。 誰が見てもブス。」

 

「誰が見てもって俺しかおらんやん!」

 

「いいんだよ! でね、スタイルは抜群で性格も器量も問題なし。 で、自分より一回り年上。」

 

「まじかよ~。ブスはいいんだよ。性格がよければさ。でも一回りはな~。」

 

「え~。オレはブスはダメだな。 性格なんかどうでもいいから美人がいいや。」

 

「バッカ、だからお前はダメだって言われるの! 美人はプライドが高いから向こうがお前を選ばねぇよ!」

 

「そんなはずねぇよ。 だって世界にオレとそいつだけだぜ? 選ぶに決まってるっつうの、オレを。」

 

「ダメダメ。 条件はブス。 これは譲れないの。で、どうする?」

 

「う~ん。まずはそっと肩を抱くかな?」

 

「いきなりかよ!下心満載じゃねぇか! もっとやるべきことがあるだろ? 水と食料を確保するとか、今夜の寝床を確保するとかよ~。」

 

「ちょっと待てよ。 それよ、日本か? 日本のドコよ?」

 

「東京でいいんじゃね?渋谷あたり?」

 

「いいよ、じゃ渋谷ね。」

 

「だったらよ、何で二人きりって分かるんだよ? 渋谷の見渡せる範囲にはオレとそのブスだけってことだろ? オレは多分望みを捨てずにそんなブスは放っておいて美人を探す旅に出るね。」

 

「ああ、それもそうだよ。どうやって世界に俺たちだけって知ることになんの?」

 

「う~ん、って言われてもね~。そんな細かい設定は考えてないよ。」

 

「どうすんだよ!」

 

やれやれ、ここらでオレが助け舟を出すしかないな。

 

「何ヶ月か歩きまわってようやく出会ったのがその二人ってことにしたら? で、話しかけたら相手も人に会ったのはあなたが初めてです、みたいなさ。」

 

「おお、さすがサトル。冴えてるねぇ。よし、そうしよ。」

 

「え~、オレはあきらめらんねぇな。 とりあえず六本木に向かって美人探すよ。」

 

「じゃあ、お前はそうしろよ。 ってゆうかさ、お前のその、六本木に行けば美人に会えるみたいな神話は何なの?オレはそのブスと食料と水を確保してこれからのことを話し合うよ。現実をきちんと見ろよ。」

 

「お前って意外と現実的なのね。」

 

「そりゃそうだろうよ!今後の対策っていうか方針を決めてさ、ついでに二人のルールも決める。」

 

「どんなルールよ。」

 

「まあ、そうだな。 飯はお前、材料確保はオレ、みたいなさ。 役割分担だな。」

 

「じゃあ、渋谷にとどまるのね? そこから移動はしない?」

 

「ああ。そうだなオレは渋谷で新しい生活を始めるよ。」

 

「で?お前は、いもしない美人を探して六本木に行く、と。 サトルは?」

 

「オレはそうね。食料はいずれなくなるだろうから多分福岡あたりまで戻るわ。 あそこなら田んぼもあるし。川もあるから米が作れるやん?」

 

「おお、じゃあサトルは福岡ね。」

 

「どうやって?」

 

「車でもかっぱらって。」

 

「え?車あんの? そんなん聞いてねえよ。」

 

「いや、あんだろうよ、普通。」

 

「じゃあ、オレ六本木にも人がいなかったら銀座まで足を伸ばすわ。車で。」

 

「誰もいやしないのに?」

 

「ま、いいや。 じゃあお前はどうすんの?」

 

最後に出題者が答えた。

 

「いや、おれさあ、秋田にオヤジ達の墓があるんだよなぁ。 長男だしさ。秋田に帰るわ。」

 

「どうやって?」

 

「だから車かっぱらってよ!」

 

「そっか、じゃあみんなバラバラになるな。」

 

「ああ、みんな元気でな。」

 

「まてまてまて。 これは現実の話じゃないぞ。 サトルの送別会だぞ。 別にみんなバラバラになる訳じゃねえよ。」

 

 

そうして20年の月日が経ってみると、このときの話が妙に現実味を帯びていた。

 

一人は結局、いい女にこだわりすぎていまだに独身だし、

 

一人は市役所に転職して職場結婚した。 相手は8歳年上らしい。

 

そしてもう一人は地元秋田に戻って農家をやってるとのことだ。

 

「なんかさ、あん時の話って結果だけ見ると俺たちの未来を暗示してたみたいでさ、なんか面白いね。」

 

そして、秋田の百姓がこんなことを言い出した。

 

「じゃあさ、今ならみんな考え方も生活も変わってるからさ、もう1回やってみようか?世界にたった二人の想像。」

 

「も~いいよ~!」

 

とは言ったものの帰りの電車で一人、想像してみた。 誰かとこの世界でたった二人きりになったら。

 

やっぱ、そっと肩を抱くだろうなぁ。

 

その相手って誰を想像しました?

 

アナタナラドウスル?

 

 

合掌

 

 

 

 

 

 

 



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