621発目 終わらない話。



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学校帰りに友達の家に寄ったら、友達のお母さんから紙袋に入れたものを手渡された。

 

「サトル君、ちょうど良かった。あんた、これあんたんがたのお母さんにやっとって。」

 

「なあん?これ。」

 

「おばちゃん、今ね中国語を習いに行きよるんよ。そんで教室のみんなとセンセとでこないだ上海に行ったと。そん時のお土産。」

 

ボクはそれを持って帰宅し母親に渡した。

 

「テツヤんちの母ちゃんからもろた。」

 

そう言って渡すと母親は紙袋を無造作に開けだした。

 

「あらあ、なんねこれ!パイナップルケーキやん!」

 

母親はすごく喜んだ。

 

「これ、ちょっと高いんやないん?」

 

「知らんよ。値段は言わんやったぞ。」

 

「当たり前やがね。どこの世界に土産渡すときに値段言うバカがおるもんね。お返しせないかんねぇ。あんたちょっと、これ持ってひとっ走り行っといで。」

 

母親はアルミホイルに包んだものをボクに手渡した。

 

「何ね?これ。」

 

「昨日焼いたシナモンアップルタルトたい。あんたら食べんやったろ?」

 

「そんなマズイもんもろたら、向こうだって迷惑やろも。」

 

「こんなのは気持ちの問題なんよ。あんたら子供には分からんかも知れんけど。まずくないっちゅうの。」

 

ボクはまたとぼとぼとテツヤの家に向かった。

 

玄関で迎えてくれたのはテツヤの母親だった。

 

「あらあらまあまあ。こんな上等なもん貰ってから、なんか申し訳ないねぇ。」

 

「ウチじゃ誰も食べんけ。」

 

「ほんならありがたく貰っとくわ。お母さんによろし言うとって。」

 

ボクはまたとぼとぼと来た道を歩いて帰った。

 

ようやく一心地ついたボクはテーブルの上の枝豆を食べながらテレビを見ていた。 しばらくしたら呼び鈴が鳴った。

 

「サトルー!ちょっと出て~! お母さん今、てんぷら揚げよるけ、手が離せんのよ~。」

 

ちっ、と舌打ちしながら玄関を開ける。 そこには困った顔をしたテツヤが立っていた。手には小さな包みを持っている。

 

「これ、ウチの母ちゃんから。」

 

「またか・・・。何や、それ?」

 

「裏の山で取れたヨモギで作ったヨモギ餅。」

 

ボクとテツヤは同時にため息をつく。

 

「じゃあの。」

 

テツヤを見送りボクはリビングに戻る。 エプロンで手を拭きながら母親が台所から出てきた。

 

「誰やったん?」

 

「ああ、テツヤ。」

 

「何やったん?」

 

ボクはテレビに夢中だったので無言でテーブルの上の包みを指差す。

 

「何ね、これ?」

 

「テツヤの母ちゃんから。ヨモギ餅らしいぞ。」

 

ガサガサと包みを開ける。

 

「あらあ、何ね、これ! 10個も入っとるやないね。 ウチ5人家族なのに。」

 

そう言って母親は台所に引っ込んだ。 もうその時点でボクは嫌な予感がしていた。

 

「サトルほらこれ。」

 

嫌な予感は的中した。 母親から渡されたタッパには山盛りのキンピラごぼうが。

 

「もうさ、俺テレビ観よんやけ自分で持って行けや。」

 

「何言いよんかね、私は今てんぷら揚げよるんやけ。あんた行っといで。」

 

ナンボほどてんぷら揚げよるんじゃ!と突っ込みたいのを堪える。

 

仕方ない。ボクは3回目のテツヤ宅を訪問する。

 

玄関に出てきたテツヤは、既に辟易とした表情を浮かばせていた。

 

「おい。これ終わらんぞ。」

「そうやな。」

「多分、ウチ今度は塩鮭やわ。北海道の親戚から昨日届いたもん。」

「テツ、お前嫌がれ! そんでこれは終わりにしよう。」

 

ボクは走って家に帰り自室に閉じこもった。

 

しばらく本を読んでいたが、玄関が開いた音がし、テツヤの母ちゃんの声がした。きっとテツヤが嫌がったので母ちゃん自ら持参したのだろう。

 

「あ~ん、もう牧本さん、そげんせんでいいとに。」

 

「違うっちゃ、ちょうど昨日親戚が送ってきてから、大きすぎてウチじゃ食べきれんのよ。腐らしても勿体ないやろ?タルトに見合うかどうか分からんけど。」

 

「いや、こっちこそあげんようけヨモギ餅もろたのにキンピラごぼうで恥ずかしいわぁ。」

 

「ええんよ、気にせんで。ちょうど今夜のおかずにしようかいな、と思いよったんやけ。」

 

「あ、ほんなら牧本さんちょっと待って。」

 

ドタドタドタ

 

「ほら、これこないだの町内会ん時に言いよったやつ。折り紙の本。ウチもう読んだけ、これ持って行って。」

 

「あら、こんなんええの?」

 

「ええちゃ、ウチはもう折り方覚えたんよ。」

 

「ほんなら遠慮なくもろとくわ~」

 

10分位してまたテツヤの母ちゃんがやってきた。

 

「いや、ヤマシタさん。ウチばっかりもろたら悪いけん、これほら。アスカちゃんの。」

 

数日前にスーパーでテツヤの母ちゃんに会ったときに飼い犬のアスカの首輪が取れて逃げ出した事件を思い出した。

 

「ほら、私、丹野さんがた奥さんと皮細工の教室に行きよろうがね?あっこの徳力のカルチャーセンター。あっこで作ったんよ。アスカちゃんにちょうどよかろ?」

 

中国語に皮細工に、忙しいおばはんやのう。

 

「いや、ダメっちゃ奥さん、こんな上等の奴。私お返し思いつかんわ。」

 

「いや、気にせんで。タルトのお礼やけ。」

 

タルトは二つ前やろも!

 

ボクは、ほとほと嫌になりオヤジの本棚から適当に出した本を読んだ。

 

その本にはこう書いてあった。

 

アメリカ大陸に渡ったピューリタンたちは、そこで原住のインディアンと出会った。ピューリタンたちの目には、インディアンがひどく交際好きで浪費を好む人間のように見えた。

 

ほほう。なるほど。そして?

 

インディアンは、たくさんの贈り物を交換しあい、もらったら必ずお返しをしなければ気のすまない人たちだ。倹約家で、こつこつとためるのが好きなピューリタンには、そういう「インディアン・ギフト」の習俗が、ひどく異様に見えたのである。

 

 

あいつらやん! あいつらインディアンの末裔やん!

 

インディアンによると、贈り物、つまり贈与には物に宿る霊が移行するという意味があるらしい。物を贈る事で霊が移行する。

 

ヤマシタ家と牧本家には現在、霊があふれかえっていることだろう。

 

「ヤマシタさ~ん、うっかりしとった、これ。イカの一夜干。こないだ呼子に行った時にようけ買って来たんよ~」

 

マダヤッテル

 

合掌

 



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