604発目 フリスクと煎餅の話。



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フリスク



横浜への転勤を命ぜられた僕は、それまでの取引先に挨拶に廻っていた。 お世話になった弁護士事務所を訪問したところ、その事務所の居候弁護士を紹介された。

 

「ちょうど良かった、ヤマシタさん。彼も来月から東京に引越すんだよ。」

 

マツダと名乗った居候弁護士は、実家の煎餅屋を継ぐため弁護士を辞めて東京の下町に引越すと言った。

 

「昨日までは六法全書を持っていた手を、今度は火鉢に持ち替えます。ははは。」

 

力なく笑う彼は、断腸の思いで上京、つまり帰省を覚悟したのだろう。

 

「それにしても最近は非常識な事案が増えてるね。」

 

そう語る弁護士は僕にこんな話を披露した。

 

「とあるアパートに住む入居者は、それまで水道水が有料だと知らなかったらしい。それだけでも十分非常識なんだが、こともあろうに彼は水道が故障したと思って水道管をはずそうとしたらしいんだ。しかも根元から。」

 

通常、水道水が出てこなくなった場合は二つの原因が考えられる。一つは水道管に何かが詰まっているか。この可能性は著しく低い。もう一つはそう、水道代を払ってなかった場合だ。水道局は再三に亘る督促の末、それでも支払いに応じない客には強攻策に出る。 彼の場合は後者で、水道局も業を煮やし水道を止めたのだろう。何しろ彼は水道代を払うというごく当たり前の行為を知らなかったと言い張るからな。

 

アパートなどの集合住宅の場合、共用部分に設置された水道メーターの横についている元栓を締めて水道が出なくする措置をとる。 しかもその元栓を自分で開けられないように、特殊な金具をカパっとかぶせてロックする。

 

だが、元栓から宅内に入っている水道管には少なからず水は残っている。

 

彼は水道管を根元から外した際に水道管に残る水を全て漏らしてしまった。その漏水が階下に伝わり、何の罪もない下の階の入居者の家財道具を濡らした。家電は全て使い物にならなくなっていたそうだ。

 

始末が悪いのはその後で、彼は通常入っておくべき家財保険に未加入だった。 そして驚くべきことに彼の言い分はこうだった。

 

「保険の加入の件も、水道が漏れる件も、水道代を払わなきゃならない件も、不動産屋からは説明を受けてない。」

 

結果、下の階の人とアパートのオーナーと管理会社の三者を敵に回し彼は法廷で争った。 もちろん完敗した。

 

イギリスのパンクバンド「クラッシュ」がこんな歌を歌っていた。

 

「I fought the law and the law won」

 

 

日本語にすると 「俺は法と戦いそして敗れた」 だ。 彼はこの曲を地で行く人物だったのだ。

 

「常識って言うと、昔の常識が今の非常識ってことも多いですよね。」

 

例えばクールビズだ。 一昔前だとビジネスマンがノーネクタイで人前に出るなど非常識だと怒られていただろう。 水もそうだ。 水道をひねると当たり前に出てきていた水を飲んでいた世代にとって、ペットボトルに入れた水を売ろうなんて、なんて非常識だ!と思ったに違いない。いまだと「水道水を飲むなんてなんて非常識なの」と眉をひそめられるだろう。

 

煎餅屋を目指すマツダさんが口を挟んだ。

 

「マツダの車だってロータリーエンジンのせいで新車で買って翌日には査定が半額になるってのが常識だったのに、今は中古でも高いですもんねぇ。」

 

彼は自分の名前にちなんで、自家用車はマツダ車しか乗らないらしい。

 

「非常識ですよね。」

 

彼は初対面の僕の前で、フリスクを口にほおばりながら、いかに現代が昔に比べて非常識かを力説した。

 

でもね、マツダ君。

 

初対面でないにしても仕事中にクライアントとフリスク食べながら打合せするのは、今も昔も非常識なんだよ、と言ってやりたかった。

 

「ヤマシタさん、東京の煎餅屋にも来てくださいね。」

 

僕は煎餅が大好きだが彼の煎餅屋にはきっと行かないだろう。

 

「ヤマシタさん、彼を応援してやってね。」

 

お世話になった弁護士の先生に頼まれたのに、煎餅屋に行きたがらない僕は非常識な人間なのだろうか?

 

かつて、ある哲学者がこう言っていた。

 

「常識とはフリスクを食べない煎餅屋のことだ。」 と。

 

モチロンウソ

 

合掌



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