596発目 強力な武器の話。


命中

初めて合コンに参加したのは20歳のときだった。当時ボクは大学生で、大学進学の醍醐味は就職に有利だからとか、もっと専門的な勉強がしたい、だとかではなく、合コンに参加すること、だと思っていた。

 

当時、付き合ってた女の子はいた。にもかかわらず合コンに参加したいと言う欲求は止めることが出来なかった。きっと、たくさんの綺麗な女の子に囲まれて、あんなことや、こんなことをやれるんだろう、と邪な妄想は膨らむばかりで、恋人に対する罪悪感などはまるっきりなかった。

 

「私の辞書に罪悪感と言う文字はない。」

 

と言い切れる程だった。

 

入学してすぐに仲良くなったヒロシという男も、ボクに勝るとも劣らずの欲求の持ち主だった。 彼には宮崎に置いてきた彼女がいた。 だが地元で彼を想う彼女に対しての罪悪感は微塵も無いようだった。

 

その証拠に、ボクの人生初の合コン話はヒロシが持ってきた話だった。

 

ヒロシがボクの元にやってきて合コンに誘ってきたときに「どうする?」とは尋ねなかった。 「どうせ断らんやろ?」 という顔で

 

「今度、合コンやるんやけどさ、他のメンバー誰にする?」

 

と聞いてきた。

 

ボクはといえば、その質問に対して

 

「ケンちゃんでどうやろか?」

 

と即座に答えていた。

 

かくしてケンちゃんとヒロシとボクの3人で、3人ともが人生初の合コンに向かうことになる。

 

合コン前日。

 

「誰が誰を気に入ったとかいうサインはどうする?」

 

「おしぼりを気に入った相手に向けよう、丸まったまんまで。まだ決まってないときはおしぼりを四角に畳んで目の前に置く。これでどう?」

 

「おお。いいねえ。じゃあそれぞれのおしぼりを気にしとけばいいね。」

 

「もしさ、同じ女の子を気に入った場合でさ、どうしても1歩も引く気はない、とか言うときは三角にしよう。 誰も気に入らんのならぐちゃぐちゃにして置こう。」

 

「よっしゃ」「よっしゃ」

 

 

合コン当日。

 

目の前に並んだ女の子たちをざっと見回した。 A子さん、すらりと伸びた栗色の長い髪が印象的なスレンダーな美人。薄い藤色のワンピースが育ちの良さをうかがわせる。 B子さん、色白で眼がくりっとした小柄な女性。クルリと巻いた髪型が洗練された印象を物語っている。まあまあの美人。 C子さん、ブス。

 

ボクは他の二人のおしぼりを確認した。 二人ともA子さんの方を向けている。 競合は避けるべきだと判断したボクはB子さんに向ける。

 

しばらく歓談しながら世間話を重ね、お互いのことが少し分かり合える時間帯に突入した。 機関銃のように繰り出した冗談話はソコソコ受けた。

 

「この店は2時間なんだ。そろそろラストオーダーなんよね。この後、どうする?カラオケでもどう?」

 

ヒロシの提案に女性人は3人ともOKを出した。

 

カラオケボックスでもおしぼりサインは継続して行われた。 数曲歌った段階でC子さんに動きが見られた。

 

「なんか暑くな~い?」

 

彼女は着ていたダンガリーシャツを脱いだ。 一瞬、驚いたが彼女はシャツの下にVネックのTシャツを着ていた。大きく開いた胸元から彼女のたわわに実る白い胸元が見えていた。

 

でかい!

 

ボクら3人は同時にそう感じた。

 

3人共がおしぼりに手をやり、C子さんに向けた。

 

C子さん。

 

あなたの武器はボクら3人の脳に見事に命中したようです。

 

タンジュンナオトコタチ

 

合掌

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