581発目 余計なお世話を焼いた話。


ファーストキッチン

ファーストキッチンというハンバーガーショップがある。 ハンバーガーも置いているがスパゲッティも置いてある。 いや、横浜のオシャレさんたちは「パスタ」と言うのか? 味もそこそこで、まあ不味くはないが特別美味いとも思わない。 かと言って「毒にも薬にもならない」と表現すると、悪口になるのでそれはやめておこう。

Fast Kitchen だと思っていた。 ジャンルとしてはファストフードだからな。 「早い台所」?なんじゃそれ?とも思っていた。

 

世田谷区の用賀という駅に降り立った。 東急田園都市線の静かな駅だ。 街行く人も上品な人が多い。 改札を抜け世田谷ビジネススクエアというビル方向に向かう。 ちょうど午後3時くらいだったので小腹がすいてきた。 目の前にファーストキッチンの看板が見えたので迷わず店内に入る。 赤い三角のマークの中に数字の「1」が描かれている。

 

ふと、店内の看板に目をやると 「First Kitchen」 と書いてある。 あれ? First なの? Fast じゃないの? と、思った。

 

いぶかしく思いながら商品を注文し、待ってる間に店員に話しかけてみる。

 

「ファーストキッチンですよね?」

 

「はい。ファーストキッチンでございます。」

 

「ファーストは1番という意味のファーストですか?」

 

「その通りでございます。 一番のキッチンで一番の商品を提供するという意味です。」

 

なるほど。

 

商品が出てきたので、トレイを持ち席に着く。 持っていたスマートフォンでgoogleのアプリケーションを立ち上げ検索窓に『ファーストキッチン』と入力し情報を調べてみた。

 

「NO.1のキッチンからNO.1の商品が生まれるという意味を込めた。サントリーフォールディングスの子会社」

 

店員の言うとおりだった。

 

低い半透明のついたての向こうに初老の女性が座った。 ハンバーガーを包んでいる紙を雑にはがして、バーガーにむしゃぶりついた。

寝癖のついた白髪頭を横に揺らしながら、口の周りにケチャップやマヨネーズが付くのも厭わず、一心不乱にパクついていた。

よく見ると鼻くそが鼻の穴の外にまではみ出しており、ほっぺたにも白いカスのようなような物がこびりついている。

 

あっと言う間にバーガーを食べ終え、次はポテトフライの紙袋を開けた。 ガシャガシャと紙袋を破り中のポテトをトレイの上にぶちまける。 それを両手でつかんでバスバスバスっと口に運んでいた。 そしてこれもあっという間に食べ終わった。

 

余計なお世話かと思ったが私は初老の女性に話しかけた。

 

「勘違いなさってるかもしれませんが、ここのファーストっていう意味は早いという意味ではなくNO.1という意味らしいですよ。だからそんなに急いで食べなくてもいいんですよ。」

 

初老の女性は、私をみつめにっこり笑って残りの飲み物をゾゾゾっと飲み干した。 ふうっと一息ついて

 

「あら、そうなの?」

 

と言った。

 

「ええ。今、店員さんに教えてもらいました。 そもそもファーストフードって早く食べるって意味じゃなくて注文された品物を早く出すって意味ですしね。」

 

「あなたの言ってる意味がまるっきり分からないわ。」

 

初老の女性はペーパーナプキンで口の周りを拭いて立ち上がった。 「お先に」と言った。

 

鼻くそは付いたままだった。

 

ナンノハナシ?

 

合掌

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