551発目 隣の男の話。



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寝不足





取引先の社長に食事に誘われた。とても良くしていただいた方で、紹介したい店があるから是非に、との申し出に私も快諾した。 連れて行っていただいたのはススキノのすし屋で、広い店内の一角にカウンターだけのこじんまりとした部屋があり、8席しかないそのカウンターは我々以外は全てカップルだった。 ただ、見た目だけの判断だが、その我々以外の3組のカップルは全て女性が水商売の人のように見え、男性は下心に満ち溢れているようだった。

 

カウンターの向こうで寿司を握る男性は、時折、客から話しかけられ、そして邪魔にならない程度の会話を楽しんでいる。実に上品なお店だった。もちろん、寿司も絶品で、魚や海苔の産地に関する薀蓄も聞けた。私にとって、とても有意義な時間だった。

 

私の左側に座った男性は、先ほどから隣の女性(つまり彼が連れてきた女性なのだが)に、しきりに自慢をしている。自慢?自慢と呼べる内容か、それ? だが、彼の表情を見ると「どうだ」と言わんばかりの恍惚とした表情が伺える。 女性のほうも、それに対してキャッキャキャッキャと相槌を打っていた。

 

「今日はさ、40分しか寝てねえんだよ、オレ。」

 

「え~!やばいじゃん。眠くない?」

 

「その前の日はさ、2時間しか寝てねえんだよ。」

 

「じゃ、二日で2時間40分じゃない!大丈夫?」

 

うむ。

 

それがどうした?

 

睡眠時間が短いというアピールは、何を意味するんだい? つまり、あれかい? 今日は寝不足だから君とホテルに行っても本来の俺の実力は発揮できないと思うぜ!って言う保険なのかい?

 

「で、その前の日は1時間。」

 

「え~、じゃあ、3日で3時間40分じゃん!」

 

「ま、大体一日平均で2時間くらいしか寝ないからさ、俺。」

 

何だこれ?おい、もういいから話を先に進めろよ!

 

「で、今日は木曜日だろ?明日も約束があるんだけど、その相手って結構朝まで飲むタイプなんだよな。参ったよ。別の用事があれば断れるんだけど、もう行くしかないよな? こうなったらトコトン行くか?」

 

「でもでも、寝不足だと肌が荒れるよ。」

 

「もう荒れてるよ」

 

見ると、確かに男性の肌はニキビだらけだった。ニキビというか、あばたというか。

 

君、君のその肌荒れはここ最近のものじゃないよね?かなり年季が入ってるよね?

 

しばらくすると、女性が席を立った。おそらく手洗いだろう。 女性がいなくなり1人になった男性の携帯電話が鳴った。

 

「もしもし、あ、ごめん。電話くれてた?5時ごろ?ああ~寝てたわ。え?昼ごろも?着信あったっけ?いや、多分、寝てた。 んだよ、寝てばっかじゃねえよ。今は起きてるよ。」

 

え~っと。どうゆうことだい? 昼から5時まで寝てたのかい? カウンターの向こうで寿司職人が笑いを堪えてる。 女性が戻ってきたので男性は電話を切った。

 

「ねえ、どうする?これからお店に来る?もし眠いんだったら、又にする?」

 

女性が心配そうに尋ねている。 お嬢さん、心配はご無用だよ。こいつは昼から5時過ぎまで寝てたんだよ。二日分以上寝てるから大丈夫だよ。

 

「いやさ、店の時間って何時までに行けばいい?もしさ、大丈夫ならどっかで1時間くらい仮眠とってそれからなら、復活すると思うんだよ。」

 

なるほど~。

 

そして出勤前のホステスとホテルに行くのか! 考えたな。 仕事の後に連れて行くと時間も遅くなるし、何より、自分も眠たいし。 だったら出勤前を狙おう、と。 考えやがったな。

 

「9時だからあと2時間くらい?」

 

ほほう。彼は今、頭の中でもっとも近いホテルの場所を検索しているな。どうする?どうする?

 

「じゃ、とりあえず、ここ出ようか?」

 

彼らの行く末は気になったが、私も連れの社長に「ちょっとつけて来ます。」とも言えない。後ろ髪を引かれる思いで、我慢をした。

 

社長は食事が終わると行きつけのクラブに連れて行ってくれた。 そこもまた上品なお店で、酔っ払って乱痴気騒ぎするような輩もいないし、静かなジャズが流れる店内と上品なホステスに囲まれて、実に上品な時間を過ごした。

 

店を出た頃には、夜の10時を少し廻ったところだった。社長は私に別れを告げ、私はお礼を言い、その日はお開きとした。

 

いつもなら深夜過ぎまで飲んでいる私は、いまひとつ飲み足りない気がしたので、行き付けのスナックへ向かった。 ボックス席が4つと4人が座るといっぱいになるカウンターがある狭い店だが、既に酔客でごった返していた。 私はそのカウンターの一つに通された。

 

左側の初老の男性はしきりにカラオケの曲を選んでいる。右隣は酔いつぶれたのかカウンターに突っ伏している。その男性が少し右にずれてくれると私は座りやすいのだが、と思っていたら気が利くホステスがその男性に話しかけてくれた。

 

「ねえ、ノハラさん、ちょっと起きて、そしてずれてよ」

 

男性は寝ぼけ眼で私に、すみません、と言うと右にずれてくれた。そしてまたカウンターに突っ伏した。

 

先ほどの「寝ない自慢」をしていた男だった。

 

 

マダネルンカイ!

 

合掌



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