106発目 ティアドロップの話


舞台IMG_1606

誰だって、涙を流すときってあるよな?
その誰かがどこかの女だとすると
硬派でならしたオレもさすがに
たじろいでしまう。かな?

満天の星空に輝く星が
ひとつ流れ去ったときのような
そんなノスタルジーを
思い描いてくれれば
俺の言ってることも
分かってもらえるはずさ。

今回はそんな女の涙の
話だ。

ビルに切り取られた四角い夜空を
ふっと見上げてみると
ネオンにかき消されて
見えにくいが、そこには
星が散らばっていた。

少し飲み足りなかったが
オレは珍しく電車のある時間に
家に帰ろうとしてたんだ。

電車はガラガラで
適当に見つけた空いたスペースに
オレは腰を下ろした。

正面に座る女がチラっと
オレのほうを見て、足を組みなおした。
見てると思われたのかな?
気にせず俺は窓から星空を
見ていたんだ。さっきの続きだ。

電車の窓ってのは
乗った奴しか知らないだろうけど
かなり汚れていて、
期待しているほど星は見えないモンなんだ。
さっきの女が窓に写ってるのに
気がついた。
熱心に、そして念入りに化粧をしてる。
その車両の俺たちの近くには
オレとその女の二人しかいない。
その女はオレが背を向けてるからか
鼻毛を抜き出したんだ!
信じられるかい?
オレは電車で化粧する神経ですら
疑ってしまうのに
その女は鼻毛を抜き出したんだ。

気づいてないフリをするだけの
やさしさはもってるから
オレはずっと窓に写る女を
窓越しに見てたんだ。

どえっくしょーーい!

女はおれでもしないような
どえらいくしゃみをしたよ。
そりゃそうだ。
鼻毛を抜いてるからな。

さすがに驚いた俺は
振り返って女を見たよ。

女は恥ずかしそうに顔をあげ
オレのほうを見たんだ。

そのおんなの頬には
一粒の涙が流れていた。
鼻毛、痛かったんだな。

全然、ノスタルジーじゃない。

IWGPフウ

合掌

“106発目 ティアドロップの話” への6件の返信

  1. いゃあ…( ´,_ゝ`)

    そこまで、女捨てきれないかも私なら(笑)軽く化粧の乱れがないかはチェックするけど、鼻毛はいくらなんでも~………(。>д<)

  2. ちょっとロマンチックを期待したのに見事に裏切られたー。
    公衆の面前で
    鼻毛抜く女の子なんていないでしょ。

    オカマ?

    創作?

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