104発目 放っておく話


舞台IMG_1606

一定間隔の音が鳴る。
ガタゴトガタゴトと。
心地よく揺れる電車の揺れは
眠気にいざなう1/fのゆらぎと
呼ばれている。

ヒーリングの世界では常識らしく
別名『ピンクノイズ』ともいう。

しかしそれも
朝の通勤ラッシュ時には関係ないな
と心の中で反論しながら、乗換駅で下りる。

駅のホームは涼しさを増し、
日差しはあるが暑さを感じさせない程度だ。

ほどなく博多行きの電車が来る。
3分遅れらしい。
車内はやたらと混み合っている。
満員電車の中、ひとり顔がぽつんと
飛び出ているのは私の身長のせいだろう。

私に密着してきているのが
年配の男性であることを除けば、
我慢できない状況でもない。

電車が揺れる、おっさんも揺れる。
眠気にいざなうか?いや無理だ。
このおっさんの頭頂部は臭い。

整髪料なのか香水なのか
それともこのおっさん自らが発する
においなのか?だんだん鼻がムズムズ
して来た。

くしゃみが出る。普段ならでかい声で
『はくしょーん』とやるのだが満員なので
控えめに『イッキシ』とやってみた。

ん?
なにか飛んだぞ。

おっさんの肩に目をやる。
ああ、なんてことだ
今、たった今私の口から飛び出した
くしゃみと共に飛び出したタンが
おっさんの肩に、乗っている。

電車は博多駅に着く。
満員の他の乗客を押しのけるように
おっさんは先を急ぐ。

急ぐおっさんを呼び止めてまで
『肩にタンが乗ってますよ』と
教えるべきか?悩む。
ああ、神様仏様
私はどうすべきでしょうか?

悩んでいる間におっさんは
見えなくなる。
そしてついに結論に到達した。

ホットケ

合掌

“104発目 放っておく話” への2件の返信

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