103発目 戦いに勝った話


スニーカー

靴を買おうと天神に向かう。
街路樹から散った葉っぱが
吹きぬけた風で舞う。
ほほに当たる風の冷たさが
心地よい。

ふと、空を見上げると
とても高いところに雲がある。
空が高いとはこの事かと思う。
季節はすっかり秋だ。
こんな気持ちの良い秋を
迎えるのは何年ぶりだろう。

そう。僕はこの夏、勝ったのだ。
この心地よさは勝利のおかげだ。

思い返せば事の発端は
中学3年生だから、すでに27年が
経過している。
長い長い戦いだった。
途中で休戦はあったんだが
あきらめたと思ってた奴らは
実はあきらめてなんかなく
翌年にまた僕を襲ってきた。

きっかけは、些細だった。
当時バレー部のキャプテンだった僕は
引退試合の当日の朝に
バレーシューズの底がはがれるという
珍事に巻き込まれた。
仕方なく後輩のシューズを借りて
試合に挑む。
2回戦で敗退し、ぐったりしながら
家路に着いた。
奴等が襲ってきたのは確か、それから
2週間後くらいだった。

初めは、足の指の間の皮が向けて
その後は猛烈なかゆみが襲ってくる。

水虫だ!あいつのシューズのせいだ!

水虫は英語でアスリートフット、
つまり『運動選手の足』と表現する。
そう考えると仕方がないとも思えるが
とにかくかゆい。

色々な薬を試したが一向に奴等は
僕の足からいなくならない。

40になり痺れを切らした僕は、医者へ行った。

その薬を塗ったところ、半年で奴等は

消えてしまった。

勝ったのだ。僕は油断することなく
勝ったと思ったその日から2ヶ月くらいは
薬を塗り続けた。

そして、完全な勝利を手中に収め、
イヤ、足中か?僕は新しい靴を求めて
天神に来たのだ。

大名小学校のすぐ近くに
スニーカー専門店がある。
ちょっとのぞいてみようと
近づくと、驚愕の出来事が。
なんと、その店の名前が
『アスリートフット』なのだ。
多分知らずにつけたのだろう。
誰がそんな水虫になりそうな店で
買うもんか!

僕はABCマートへ行くことにした。

二度と奴等に会いたくないからな。

アーカユクナイ!

合掌

“103発目 戦いに勝った話” への7件の返信

  1. 初訪問っす

    まだ、90発目あたりまでしか
    遡ってないですが、電車内で
    ニヤニヤさせてもらってます

  2. ピンバック: 冬靴の存在 | ライナーノーツ

  3. ピンバック: 464発目 しめえの話。 | ライナーノーツ

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