518発目 脇役の話。


ライナーノーツ

ラジオのある番組で、こんな話を

していた。

 

今、世間を賑わせている

プレミア12のことだ。

 

知らない人のために

ちょっと補足を。

 

プレミア12とは野球のことだ。

野球の世界ランキングの

上位12チームが対戦して

真の世界一を決めようという

大会だ。

 

光栄なことに、決勝トーナメントは

日本で行われる。

 

わが国、全日本の野球チームは

プロ12球団の中から選抜された

メンバー28名が集い侍ジャパンと

名付けられた。

 

私が応援するホークスからも

4名が選出されている。

 

当初、パリーグでトリプル3を

達成した柳田が選ばれてたが

直前で辞退したため、急遽

召集されたのがチームメイトの

今宮だった。

 

 

今宮は大分出身で身長171センチと

小柄ながら守備の上手さを評価され

2010年の入団から3年目の2012年に

は1軍に昇格し、以降ホークスの

ショートが彼の定位置になった。

 

2013年と2014年には

ゴールデングラブ賞も獲得した。

 

個人的には非常に好きな選手の1人だ。

 

ところが、だ。

 

ところが、北海道のラジオの

パーソナリティは、今宮の

すごさがまったくわかってない。

 

侍ジャパンのメンバーを

鍋の具材に喩えたのだが

今宮を水炊きの水菜と

いいやがったのだ。

 

 

そもそも、鍋に喩えるなら

水炊きのような具の少ない

鍋ではなく、しかも

北海道なんだから、石狩鍋

あたりに喩えればいいのに。

 

石狩鍋にだって水菜は

入れるだろうに。

 

『シャキシャキして歯ごたえが

ある水菜は確かに今宮ですね~。』

 

だと!!!???

 

鍋に入れた水菜は

シャキシャキしとらん!

へにゃ~っと

なっとるやろうが!!!!

 

まったく!

 

今宮をバカにしやがって!

 

誰かにこのことを話したい。

 

私は自宅に帰って

奥さんに話そうとした。

 

「夕食の準備で忙しいけ

あとにして」

 

奥様から返って来た

回答は取り付く島もなかった。

 

 

偶然なのか、知ってたのか

その日のメニューは

水炊きだった。

 

「久しぶりにお父さんが

早く帰って来たから

今日はおなべよ~」

 

福岡から取り寄せた水炊きと

かしわ肉は、それはそれは

絶品だった。

 

柔らかく煮込んだ人参も

しいたけも絶品だった。

 

 

私は今宮の事をすっかり

忘れて舌鼓を打った。

 

「そういえば、今日は

侍ジャパンの準々決勝だ!」

 

食事も終盤に差し掛かり

私はテレビ中継を思い出した。

 

1次リーグを完全勝利で

1位通過した侍ジャパンは

プエルトリコと対戦だった。

 

確か日本時間の20時から

放送される。

 

「早く食べ終わって

野球を見ようよ」

 

「まだ、〆のおじやが

あるわよ」

 

 

ああ、おじやは食べないと。

鍋の醍醐味のひとつだもんな。

 

鍋の底に残った具材を

拾い集め、ご飯をスープに

ぶち込んだ。

 

といた卵をくるりと

入れ、柔らかくなった

おじやをかき込む。

 

至福のひと時だ。

 

全てを食べ終わって

焼酎を飲んでいたら

奥さんが声をあげた。

 

「あ~!」

 

「どしたどした?」

 

「いや、ごめん。

水菜、入れ忘れとった」

 

「え~、水菜は忘れたら

いかんやろ~。

侍ジャパンで言うたら

今宮ぞ~。脇役じゃないぞ~」

 

奥様はきょとんとしていた。

 

野球に興味の無い奥さんに

この喩えは、そもそも

無用だったのだ。

 

「あしたのサラダに

しよっと」

 

今宮(水菜)はあっさり

戦力外通告となった。

 

さてさて、そろそろ

プレイボールじゃないか。

 

私はテレビのスイッチを入れる。

 

丁度、先発メンバーが

発表されているところだった。

 

今宮は?今宮は?

 

前日のベネズエラ戦で

ライト前ヒットを打った

今宮は?

 

 

ベンチ入りだった。

 

 

ヤハリミズナ?

 

合掌

 

 

 

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