483発目 他人の趣味の話。



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路面を這うように吹いてきた風が

ビニール袋を宙に浮かべた。

 

まだ9月の初旬だというのに

しとしとと絡みつくように降る雨が

街全体を暗く、寒い雰囲気に

変えていた。

 

私は札幌市の企業で作られた

会合に出席の予定だったため

樽川通りを南に向かって

歩いていた。

 

狸小路を過ぎ、右前方に

ノルベサが見えてきたとき

道路わきに置かれた自販機の

あたりから声が聞こえた。

 

足を止め耳を澄ます。

 

気のせいか?

 

再度、歩き出そうとしたら

今度ははっきりと聞こえた。

 

『た、助けて・・・』

 

え?え?何?何?

 

声がした方を見てみるが

誰もいない。自販機が3台ほど

並んでいるだけだ。

 

少し戻って自販機の裏を

除いてみるが壁があるだけだ。

 

『ううううう』

 

だが、明らかに声がする。

 

私が背中に寒さを感じたのは

季節はずれの氷雨のせいではなく

正体不明の男の声だ。

 

足早にそこを立ち去ろうという

思いと、どこから声がするのか

突き止めたいという気持ちが

交錯していた。

 

周囲を歩くほかの人々には

聞こえてないのか?

このうめき声が。

 

歩道を歩く人々は本当に

何も聞こえてないかのように

足早に立ち去って行く。

 

やはり気のせいか。

 

と、その時。

 

歩道の北側から、つまり

私が今歩いてきた方向から

制服のおまわりさんが歩いてきた。

 

変な人と思われるかもしれないが

ここは一つ、彼に協力してもらおう。

 

私は制服警官を呼び止めた。

 

『あ、オマワリさ~ん。』

 

すると自販機の間から

今度ははっきりとした声で

 

『あ、警察は止めて!!!』

 

と聞こえた。

 

え?と思い、自販機の

間を覗こうとしたときに

警官が近づいてきて

『どうしました?』

と私に尋ねた。

 

私は警官に説明した。

 

『自販機の周辺から

人の声がするんです。

助けてって言ったり

警察は止めてって言ったり。』

 

『ほう、それは妙ですな。』

 

警官は自販機を一つ一つ

点検して廻った。

 

私はドキドキした。

もしコレが私の空耳で

警官は私のことを変質者扱い

したらどうしよう。

 

だが、私のそんな心配も

杞憂に終わった。

 

その制服警官がこう言ったのだ。

 

『おい、お前!そんなところで

何してる!』

 

私は警官が覗き込んでいる

トコロに近づき一緒に覗き込んだ。

 

そこは自販機と自販機の間の

25センチくらいの隙間だったのだが

そこに小汚いオッサンが

挟まっていたのだ。

 

オッサンは小声で

 

『ちょっと入り込もうと思ったら

出れなくなっちゃったもんだから

大もしたくなったけど

動けないから、そのまま

ここでしちゃった。』

 

と言った。

 

『しちゃった!じゃないでしょ!

何やってんの?早く出てきなさい。』

 

『いや、あのお巡りさん。

これ結構きつくて出れません。』

 

『ほら、私の手を掴んで!』

 

『いや、手も足も動かないんですよ。

口しか動かない。』

 

そうこうしていると周囲に

人だかりが出来だした。

 

警官は無線で応援を呼び、

応援が来るまでの時間を利用して

自販機の持ち主と思われる

商店の中に入っていった。

 

すぐに出てきて今度は

私の正面に立った。

私はその場で事情聴取を受け

開放された。

 

だが、その後の展開が気になったので

私はその場に踏みとどまった。

 

ソレからは大騒ぎだった。

 

商店の店主が鍵を持ってきて

自販機同士を繋いでいる鎖を

外し、応援に来た警官5人がかりで

自販機を端から順に動かし

ようやくオッサンが動ける隙間を

作ってオッサンを助けようとした。

 

ところがオッサンは出てこようとしない。

警官もちょっと切れだして

 

『なにやってんの!お父さん!

手を離して!』

 

とか言ってる。

 

流石のオッサンも屈強な

警官5人がかりで引っ張られたら

踏ん張りも効かず、

最後はずるずると引き吊り

出された。

 

出てきたオッサンは、汚い

格好をしており、強烈な

悪臭も放っていた。

 

ズボンは茶色く変色し

元の色が何色だったか

分からないほどだ。

 

『何、お父さん、漏らしちゃってんじゃん!』

 

警官の一人が言った。

 

オッサンは更に小声でこう言った。

 

『寒くて行くトコがないし、

そこは暖かいから・・・』

 

自販機の熱で暖が取れる。

そうゆう理由で挟まってたのか。

 

『身動き取れなくなったときは

あせりました。

もう一生、ここで過ごすんだって

覚悟もしました。』

 

しゃべり続けるオッサンの傍らで

警官がオッサンのボディチェックを

始めた。

 

『な、何を・・何を!』

 

『いやね、物騒なモノでも

持ってないか、一応ね。』

 

オッサンは抵抗もせず

警官のなすがままだった。

 

やがて警官がオッサンの

携帯電話をポケットから取り出した。

 

『ちょっとこれ、暗証番号

入れてロック解除して。』

 

『あ、いや、これは

私のじゃなくて妹ので・・』

 

オッサンは急に挙動不審になった。

怪しい。絶対怪しい。

こいつホントは暖をとるためじゃなく

何か別の目的で自販機に

挟まってたんじゃないか?

 

私と同様の疑いを警官も

持ったようだった。

 

『いいから、早く!』

 

口調も厳しくなった。

心なしかオッサンを見る目も

哀れみから、容疑者を見る目に

変化したようだった。

 

『ああ、は、はい。』

 

力なく携帯電話のロックを

解除したオッサンは観念したのか

がっくりとうなだれた。

 

『なんじゃこりゃ!』

 

警官が大きな声を出した。

 

応援に来ていた何人かも

携帯電話を覗き込む。

 

私もどさくさに紛れて

覗き込んだ。

 

パンチラやら無修正やらの

エロ画像がたんまり入ってるんだろ?

盗撮の現行犯じゃねえのか?

そうすると、オレ、お手柄やん!

 

なんて事を考えながら覗き込んだ。

 

オッサンの携帯には何枚もの

自販機に挟まれた自撮り写真が

保存されていた。

 

 

あきれた警官が一言発した。

 

 

『何だよ!お父さん!

趣味で挟まってたの?』

 

 

ヒトサワガセナオヤジ

 

合掌

 

 



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