『謝罪』 第3話



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その土地が本当に売り物件かどうか? 真偽を確かめるために私はマッサンと会った翌日から調査を開始した。

 

通常、売り物件の資料には必ず取引形態が記載されている。取引形態には主に4種類あって、専属専任媒介と専任媒介、一般媒介、そして仲介だ。

マッサンから渡された資料にはこのどれもが記載されてなかった。 もし仲介と記載されていたら売主は別の業者に売却を依頼しており、その業者がマッサンに売ってきてよと依頼した事になる。しかし記載されてないところを見るとそもそもこの土地自体が売りに出されてないか、もしくは売りには出されてるがマッサンには誰も依頼してないことになる。

 

まずは土地の所在地から所有者を調べる。方法としては法務局に直接出向いて登記簿謄本を閲覧するか、インターネットで登記簿謄本の現在事項を取得するという二通りのやり方がある。 インターネットで取得する方法は企業が法務局に登録して専用のIDを持ってないと取得できない。 謄本を1回見るだけで400円弱かかるネットに対し法務局へ直接出向くと1000円の登記印紙を購入しないと閲覧も出来ないし、コピーをとるのにも更に費用が発生する。 私は会社のパソコンから法務局の登記簿謄本サイトにアクセスし、該当の土地の登記簿謄本を取得した。

 

私の事務所は西武新宿線の新所沢駅に近いところにある。 所沢市は埼玉でも西に位置しており埼玉の中心部に向かうより池袋や新宿などの都内に出るほうが便利が良い。 今回の土地は所在地が東京都清瀬市となっている。ここだと所沢で西武池袋線に乗り換えてすぐだ。所有者の住所は埼玉県川口市となっているので私は先に現地に行くことにした。

 

幸い現地は清瀬駅から徒歩で5分の場所だった。 住宅街の中にぽっかりと穴が開いたように広大な敷地が広がっている。 資料によると敷地面積は1074.38㎡となっている。 一般の人は㎡数を坪数に直すときに3.3で割ると思うが、不動産業者は0.3025をかける。その計算の方がより正確に坪数を出せるのだ。 計算によると敷地面積は325坪ということになる。 ということは売却価格が2億6000万円なので坪当たり80万円ということになる。

敷地の形はほぼ正方形なので間口も奥行きも約33mだなと、暗算してみる。 私はこういう計算が得意だ。 そう、もちろん自慢だ。 次に道路の幅員を測ってみる。 私の1歩は大体80cmなので歩測で測れる。 不動産業者は長さを測ることが多いので自分の歩幅や腕の長さを暗記している人は多い。 前面道路の幅員は10歩、つまり約8mということが分かった。

後は隣地との境界線を示す境界杭を確認する。もう一度敷地を眺めてみた。 売り地の看板は出ていない。 仕方が無いので土地の所有者に直接当たるしかない。 私は一旦、駅へと戻った。

 

駅へ戻ったころには全身にびっしょりと汗をかいていた。のども渇いたので駅前の喫茶店で休憩することにした。アイスコーヒーを注文し冷たいお絞りで顔や首を拭く。 自分がおじさんになったことを思い知らされる。 かばんの中から謄本のコピーを出してもう一度所有者の住所を確認する。

『埼玉県川口市青木』

ここからだとどうやって行けば良いのだろうと思案していたら喫茶店のマスターが離しかけてきた。 客は私しか居ない。

 

『不動産屋さん?』

 

私は驚いて顔を上げた。 どうして分かったんだろうという顔をした。すると

 

『どうして分かったんだろうって顔をしてますね?』

 

とマスターは言った。

 

『ええ、驚きました。どうして分かったんですか?』

 

『そりゃあ、あなた謄本を持ってるのは不動産屋か金融関係の人でしょ?』

 

『お詳しいんですね。』

 

『私も以前は債権回収の会社に勤めてたのでね。今は脱サラしてこの通り。』

 

『なるほど。どちらでお勤めだったんですか?』

 

『この辺ですよ。会社名はご勘弁ください。』

 

『だったらこの土地、ご存じないですか?』

 

私は住宅地図のコピーをマスターに見せた。

 

『ああ、清宮さんの土地だ。あそこはいろんな不動産屋や建設会社が狙ってますよ。でも地主が頑固な人でね、絶対売らない、俺が死んだら清瀬市に寄付するって言ってるんですよ。』

 

私は考えた。 このマスターが言うことが本当なら飛び込みで会いに行くのは得策ではなさそうだ。 では何故 『絶対売らない』 と言っていた土地が売り情報として私の手元に来たのか? マッサンがウソをついているとしか考えられなかった。

 

マスターがノートパソコンを私のほうに向けた。

 

『ほら、流通にも出てないでしょ?』

 

画面を覗き込むとそこにはレインズのサイトが表示されていた。 通常、売主と媒介契約をした不動産屋は指定流通機構に物件を登録する義務が生じる。 指定流通機構の最大手はこのレインズだ。 そこのサイトに出てないということはやはり売り物件ではないということだ。私は行動を起こす前にレインズを確認し忘れていたことを悔やんだ。

 

仕方ない、マッサンを詰めるしかないな。 私はマスターにお礼を言ってコーヒー代を払い駅のコンコースにある公衆電話からマッサンに電話をかけた。

 

ツヅク

 

合掌



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