『謝罪』 第2話



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ドン小西ことマッサンはボッテガのバッグからクリアファイルを取り出した。 中には数枚の紙が入っている。 ソレを私に渡しながら、中身を確認してくれと言った。

 

『私の本業はソレなんだよ。』

 

クリアファイルの中にはA4に印刷された住宅地図と物件概要書と書かれたやはりA4のペーパーが2枚入っていた。 物件概要書の一番上には 2億6,000万円 と表示されている。更に目を通すと土地の所在地や水道管、ガス管の有無、建築基準法上の法規制がどのようにかかるかなどが詳細に印字されていた。

 

『売り土地ですね。』

 

『そうそう。 今俺が預かってる物件さ。 誰かに売らないと俺もメシが食えないからさ。 ヤマシタさんなら誰か買い手を見つけてくれるんじゃないかと思ってさ。』

 

詳しく話を聞いてみると、マッサンが良く行くスナックでユウキさんという私を紹介したおっさんと知り合って5年ほど経つらしい。 ある時、土地を売りたいんだけど買い手が見つからないとボヤいてたらユウキさんが私の名前を出して、彼なら若いけど結構、情報を持っているよ。と言ったらしい。 事実、私はユウキさんの会社が所有していた埼玉の1500坪の土地の売却を依頼されてから2週間で売ってきた実績がある。

 

ただ、そのときはたまたま買い手からも土地探しの依頼を受けていただけでタイミングが良かっただけなのだが、社長、つまりそのユウキさんは私の事を高く評価した。

 

『買い手分れでいいからさ。』

 

買い手分れというのは仲介手数料の取り分のことだ。 通常、仲介手数料は売却価格の3%+6万円を売主、買主の双方から取れる。 手分れというのは一方の業者が売り手から、もう一方の業者が買い手からと手数料を取る。買い手分れというと、買い手からの仲介手数料を私とマッサンとで折半しようという申し出だ。 マッサンは何もせずに買い手を見つけてきた私から濡れ手で粟の手数料を手にするということになる。 今回の場合だとマッサンは情報を私に渡しただけで393万円を手にすることができるという絵図だ。

 

『売り元はどこですか?』

 

そう尋ねた私にマッサンは答えを濁した。 これは明らかに不動産ブローカーの手口だ。売り元というのは土地の所有者から正式に依頼を受けた不動産業者でその業者が買主を探して来て契約が成立すれば売り買いの双方から手数料を手に出来る。 つまり1,572万円の手数料をゲットできるのだ。 コレを業界では『往復ビンタ』もしくは『両手商売』と言う。 だが、両手で成約することはめったになく、大体の場合は仲間の不動産業者などに買い手を探してもらい手数料を折半、つまり手分れにする。 マッサンはどこからかこの売り情報を聞きつけ、そして買い手を探してくれそうな業者と売りもとの業者をマッチングさせるだけで400万弱の現金を手にしようと目論んでいるのだ。 もしかすると自分で買い手を探して来ても契約できないのかもしれない。それは正式な宅建業者じゃない可能性もあるからだ。

 

私は慎重に成らざるを得なかった。 マッサンが宅建業者じゃない場合、仲介手数料という名目での支払いは出来ない。法的に仲介できない立場だからだ。

 

『買主から頂く仲介手数料の半分をマッサンにお支払いすればよいのですね?』

 

そう尋ねたらマッサンは案の定、こう答えた。

 

『いや、紹介料って形にしてもらいたいんだよな。』

 

やはり。 マッサンは宅建免許を持ってない、と確信した。 そもそも正式な宅建業者ならこんなホテルのロビーではなく事務所に呼ぶはずだ。 だが、ヤマシタはこの物件を買う人に思い当たる人がいた。 だから情報の真偽はともかくとしてこの資料だけは持ち帰りたいと判断した。だから、ここで紹介料だ仲介料だとモメても良いことはない。承諾したフリをして資料を持ち帰り、じっくり調査をしよう。

 

『分かりました。 とりあえず探してみますのでこの資料を頂戴します。』

 

マッサンは気を良くしたのか資料をそのまま私にくれた。 コーヒー代もマッサンが出してくれた。 その後、雑談をしマッサンと別れた私はユウキさんに電話をした。

 

『あのマッサンって本業はなんですか?教えてくださいよ。』

 

『不動産屋だとは言ってたけど、どした?何か問題があったの?』

 

『いえ、とても良い情報をいただけました。 社長からもお礼を言っておいて下さい。』

 

こうゆう海千山千の業者とはキツネの化かし合いみたいなモノで、本音は絶対表に出さないのが鉄則だ。 ユウキさんからマッサンに『ヤマシタさんが喜んでいた』と言ってもらうだけでマッサンは油断する。 下手するとしめしめと思うかもしれない。 私としては彼が油断している間にこの情報の真偽を調査し、正式な売買物件として物件化する時間的余裕が出来る。

 

翌日からヤマシタはこの物件の調査に取り掛かった。

 

ツヅク

 

合掌



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