大きさ ⑥


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『俺らが小5の時に馬は

転校してきたんよ。』

 

キョウイチは馬と同じ小学校

だったらしい。

キョウイチや馬が通う小学校は

1学年に1クラスしかない小さな

学校でキョウイチはその時すでに

クラスの中心人物だったという。

 

5年間、ずっとクラスで一番足が

早く運動会の時は必ず代表選手に

選ばれていた。

 

ところが馬が転校してきた初日の

体育の授業でキョウイチは馬に

50m走で負けた。

 

ところがキョウイチが馬に負けたのは

その日だけだった。

馬はその頃から無口で

何を考えてるか分からない

男だったが、キョウイチには

馬がわざと負けてるとしか

思えなかった。

 

負けん気の強いキョウイチは

小学校を卒業するまで何度も

馬に真剣勝負を挑んだが

馬は毎回、悲しそうな顔をして

首を横に振るだけだった。

 

『でも、それやったら

馬を無視すればいいだけやんか。

なんで俺らまで巻き込むんか?

ほんで、だいたいお前だけの問題に

何でシンゴンやら他の奴らまで

巻き込むんか?

お前、あれか?一人じゃ

何も出来んのか?』

 

『うるせえっちゃ、サトル。

お前のせいやろが!』

 

ヤマシタはキョウイチの言う意味が

分からなかったがヒデオは

思い当たることがあるらしかった。

 

『キョウイチ、お前チヅルに

惚れとうの?

ほんで、サトルがチヅルと

仲がいいけ、それで

嫌がらせしようっち思ったんやろ?』

 

キョウイチは何も言わない。

ヤマシタはただ、キョウイチも

チヅルの大きなおっぱいが

好きなのかぁ、と長閑に

思うだけだった。

 

『へっ!分かったような

口を利くな!ヒデオ!

お前のそのなんもかんも

見透かしたような態度が

気に食わんやっただけよ。

サトルはついでや。いっつも

お前ら一緒におるけ、ついでに

無視してやったんよ。』

 

この言い方にはヤマシタも

嘘だと気づいた。

キョウイチは何かを隠している。

 

昼休みの終わりを告げる

チャイムが鳴り、シンゴンたちは

教室へ戻った。

ヤマシタ、ヒデオとキョウイチは

3人で無言のまま立ち尽くしている。

やがてキョウイチが口を開いた。

 

『お前ら、馬が何でしゃべらんか

知っとうとや?

知らんめぇが。知らんくせに

馬に優しくして満足しとるんか?

そんなもん、偽善やねぇか。

チヅルは本気で馬の事を

心配しとるのに、馬は、

あいつは全然、分かってねぇ。』

 

『どういう事なんか?

馬が何でしゃべらんのか

お前は知っとんか?』

 

『何で、チヅルは本気で

俺らが偽善なんか?』

 

『チヅルは馬の事を本気で

心配しとるんや。

あいつも馬がしゃべらん理由を

知っとるはずや。』

 

え?

 

ヒデオとヤマシタは言葉に詰まった。

 

 

馬が喋らない理由。

それが分からないと

俺たちは本当の友達には

なれない、そう思えて仕方がなかった。

 

ヒデオは何かに多い当たった顔を

してキョウイチに尋ねた。

 

『それと馬が昼休みにおらんくなる

のは関係があるんか?』

 

ヤマシタは昼休みに馬が

いなくなることにヒデオが気づいていた

事実に驚いた。

 

『ヒデオ、それ知っとったん?』

 

『ああ、お前らに内緒で

毎回、尾行しよったんやけど

いっつも見失うんよ。

おい、キョウイチ、馬は

いっつもどこにおるんか?』

 

キョウイチは二人の顔を交互に

見ながらやがて腰を上げ

歩き始めた。

 

『ついてこい。』

 

授業中の校内は気味が悪いくらい

しん、と静まり返っていた。

 

ソロソロクライマックス

 

合掌

 

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