大きさ ⑤


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チヅルの顔色が変わったことに

気がついたヤマシタは”ヤバイ”と

とっさに判断した。

 

『チヅルは予定通り馬を

探しに行って来いよ。

オレはヒデオが心配やけ

様子を見に行ってくる。』

 

そう言うとヤマシタは颯爽と

教室を飛び出した。

 

ヤマシタの後姿を見ながら

チヅルは、

さっきは器が小さいと思って、

ごめんね、と心の中で

謝った。

 

 

体育館の裏につくとキョウイチが

尻餅をつき、地面に座った状態で

ヒデオを見上げていた。

地面に落ちている石を手に取り

立ち上がろうとしているキョウイチを

ヤマシタは走りこんだ勢いで

蹴り飛ばした。

 

『お前、汚ねぇぞ!石なんか持って!』

 

蹴り飛ばされたキョウイチは

地面に横たわっている。

ヒデオの横に並びそこにいる全員を

にらみ飛ばした。

 

『お前らもかかって͡こい。

いっつもキョウイチの言いなりで

ヘラヘラしとるだけやろうが!』

 

『サトルの言う通りやな。

お前ら全員、そこに座れ。』

 

ヒデオの静かな物言いが

却って不気味だったのか

そこにいた全員は地面の上に

正座をしだした。

ヒデオは端っこから一人ずつ

蹴っていく。

 

『お前らみたいな卑怯な奴らは

俺は絶対許さんけの。』

 

ヒデオに言われた事に腹を立てる

奴はいなかった。ただ黙って

蹴られている。

 

その向こうではキョウイチが

うずくまったままだった。

 

最後の一人を蹴ろうとしたとき、

それはシンゴンだったのだが

シンゴンが叫んだ。

 

『馬が悪いんやろが!

馬がお前らを無視してくれっち

キョウイチにお願いしたんぞ!』

 

二人は一瞬、シンゴンが何を

言ってるか分からなかった。

 

『どういう事か。それおい。

シンゴン、ほんとか?』

 

シンゴンはキョウイチの方を

振り返り叫んだ。

『キョウイチ、そうなんやろうが?

お前、俺にそう言うたよの?』

 

キョウイチはゆっくりと背を向けて

立ち上がりこちらに近づいてきた。

 

ヒデオの横まで来るとキョウイチは

シンゴンを蹴り飛ばした。

 

『うるせぇっちゃシンゴン。

余計なこと言うなっちゃ。』

 

ヤマシタとヒデオは混乱していた。

シンゴンはキョウイチに向かって

 

『お前がそう言ったんやねぇか!

だけヒデオとサトルを無視するっち

みんなで無視しようっちなったんやろうが!

何や?あれは嘘やったんか!』

 

『うるせぇっちゃ!

しゃべるな、ぼけ!』

 

シンゴンに拳を振り上げたキョウイチの

肩をヒデオが掴んだ。

 

『キョウイチ、どういう事か

説明せ。シンゴンの言いよることは

ホントなんか?』

 

ふうふう、と息を整え

興奮を抑えながらその場に

キョウイチは座り込んだ。

両手で頭を抱えて

やがて真実を語り始めた。

 

ツヅク

 

合掌

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