420発目 やられる話。


ライナーノーツ

恋愛において絶対に

許容できない女性のタイプが

いくつかある。

 

言葉遣いの悪い女。

声が大きい女。

不細工な女。

意地の悪い女。

 

そして最も嫌いなのが

媚びた女だ。

 

甘ったるい声を出し、

やたらと男の体に触る。

上目づかいで近づいてきて

モノをねだる。

 

同性の友人と話すときは

普通の声なのに、男と

話すときだけワントーンくらい

上げて話す。

 

若いころは

『こいつ、わざとやな。』

と思っていたが

最近になってようやく気が付いた。

あれはわざとではなく

『本能』なのだ。

 

本能で媚びてくるから

それを見抜けない男も多い。

 

デレデレしてみっともない。

 

『え~!すご~い!』

 

と、大してすごくないのに

男を褒めちぎる。

褒められて男は

まんざらでもない顔で

 

『大したことねぇよ』

 

と謙遜する。

そう。君は大したことない。

すごいのは大したことない男を

褒める女の方だ。

 

東京や福岡にいたころは

そんな女が山ほどいた。

 

そしてそんな女に惚れて

撃沈された男も星の数ほどいた。

 

そしてここ札幌に来てからは

そういう女を見ない。

だから札幌っていい街だなぁ。

と思っていた。

 

ところが

 

現れた。

 

とある会合に参加した時だ。

 

年配の男性に囲まれて

それぞれの男性たちを

見上げながら、時折

黄色い声をあげ、談笑している。

 

かいがいしく食事をとりわけ

最も自信のある角度で

オジサマに流し目を送り

キャッキャッキャと笑う。

 

背が低く色白で

タレントでいうとコバヤシナントカ

に似ている。

 

顔見知りの社長が

私に気が付き、近づいてきた。

 

『ああ、社長、ご無沙汰してます。』

『ヤマシタさん、お元気でしたか』

 

この社長はとても気さくな方で

私が尊敬する男性の一人だ。

集合住宅に光ケーブルを

導入するお仕事をしている。

建設会社などが主要の営業先で

私とは時々情報交換をしている。

 

そこにあの媚びた女が

近づいてきた。

 

『しゃっちょ~う、どこ行ってたん

ですかぁ~』

 

何なんだお前は。

なんで全部ひらがなで

喋るんか!

 

すると社長が私に彼女を

紹介した。

『ウチの営業担当です。』

 

私は仕方なく名刺を差し出し

彼女とあいさつを交わした。

 

なるほど。社長。

考えましたね。

 

建設会社の営業マンを相手に

営業をかけるなら、なるほど

こんな女だと効果がありそうだ。

 

だがな、女。よく聞け。

俺にはその色仕掛けは

通用しないぞ。

 

『ヤマシタさんはね福岡から

転勤で来られたんだ。』

 

『え~!そうなんですかぁ~

らあめんおいしいですよねぇ~』

 

腹立つなぁ、この喋り方。

 

『ああ、博多は行かれたこと

ございますか?』

 

『いえ~、ないんですよ~

こんどぉはかたのことぉ

いっぱい、おしえてくださぁい』

 

そう言って彼女は私の顔を

見上げた。

長いまつげと濡れたような

大きな瞳。

私は一瞬言葉を失ったが

すぐに我を取り戻した。

 

ふう、危ない危ない。

 

彼女は他にも挨拶に

いくのだろう

『じゃあ、またあとで』

と言って立ち去った。

 

社長は私を笑いながら見て

 

『彼女、かわいいでしょ?』

 

と言ってきた。

 

『社長の彼女なんですか?』

 

と聞いてみた。

 

社長は遠くを見ながら

ぽつりとつぶやいた。

 

『彼女は誰のものでもありません。

みんなのものなんです。』

 

と言った。

 

『なんですかそれ?』

 

『彼女がそう言うんですよ。』

 

はっはあん。

 

さては社長。

手を出そうとして

フラれたな。

 

バカだな。

 

あの手の女はそうなんだよ。

 

ベッドまで行っておいて

『だぁめ、今日はここまで』

って言うタイプなんだよ。

 

会合が終盤に差し掛かり

私は帰る準備を始めた。

コートを手に取ると彼女が

近づいてきた。

 

『あ~やましたさぁん。

もうかえるんですかぁ。』

 

ちっ。

来やがったか。

 

『にじかい いっしょにいきませんかぁ?』

 

そう言って彼女が私の腕に

ぎゅっと胸を押し付けて来た。

 

あれ?

 

着やせするタイプ?

 

ふと見下ろすとブラウスの

隙間からふくよかな胸の谷間が。

 

 

白い胸の谷間>明日の会議

 

う~ん。

 

 

二次会に行くことにした。

 

ヤラレタ

 

合掌

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*