418発目 つまみだされる話。


ひかるげんじ

大学の頃のことだ。

 

友人がどうやら入院したとの

連絡があった。

 

その事を伝えてきたのは

共通の友人だった。

 

何の病気で入院したのか

尋ねたら結核だと言う。

 

だから隔離病棟に入院していて

一般の人とは接触できない

ということだった。

 

『一般の人ってどうゆう人?』

 

『さあ、オレ達みたいなヤツやない?』

 

『じゃあ芸能人は?』

 

『芸能人はそうやね。

一般人やないけ、見舞いできる

かもね。でもあいつに芸能人の

知り合いがおるとは思えんよ。』

 

ま、それもそうか。

 

入院していると聞いたのに

お見舞いも出来ないなんて。

 

私のおせっかい心に

火がついた。

 

翌日、私は彼が入院している

病院に行った。

 

受付で来訪の意図を告げる。

 

『お見舞いに来ました。』

 

『ああ、〇〇さんは隔離病棟

なので面会謝絶です。』

 

にべもないとは

こうゆう事だろう。

 

受付の女性は私をなめるように

見回し、そしてこう続けた。

 

『〇〇さんのご友人?』

 

『ええ。』

 

『面会謝絶って知らなかったの?』

 

『いえ。一般人はダメとの

事だったので。』

 

受付の女性は更に怪訝な表情を

浮かべた。

 

『一応伝えとくわ。

お名前は?』

 

その時の私はジーンズのショートパンツ

と素肌にジージャン。

頭にはネジリ鉢巻をして

ローラースケートを履いていた。

 

『ヒカルゲンジです。』

 

受付の女性はちっとも

笑わない。

 

『あのダメなのは一般人ですよね?』

 

すると彼女はようやく

笑みらしきものを見せた。

 

『確かにあなたは一般的では

ないわ。でもねそうゆう

意味じゃないの。』

 

そしてこう付け加えた。

 

『本当の名前をフルネームで

教えてちょうだい。』

 

『はい。大沢樹生です。』

 

『ちょっと待っててね。』

 

しばらくすると制服を着た

警備員が二人やってきて

文字通りつまみ出された。

一人に羽交い絞めにされ

もう一人に首根っこを

押さえられた。

 

後にも先にも私の人生において

こんなにもスベったことは

これっきりだ。

 

忠告しておこう。

 

友人の見舞いに光源氏の

格好で行くとつまみ出されるぞ。

 

この一部始終を見ていた

看護学生と2年後に

付き合う事になるとは

この時の私はまだ知らない。

 

ウケルトオモッタンダケド

 

合掌

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