387発目 宇宙の話。


ライナーノーツ

俺たちは一体、何処から来て

何処へ行くのか?

 

かつてある物理学者が言った。

 

この世のすべては数学と

物理で証明できる。

それはどういうことか?

神がいるという証拠だ、と。

 

女性には分かってもらえないが

男性が数名集まり宇宙について

語りだすと朝まで語りつくすことが

よくある。

 

その日は友人のアパートで

私を含め6名が集まっていた。

 

そのうちの一人が、数学と

物理について語りだした。

 

『サトルはどう思う?』

 

私は返事の代わりに

訥々と語り始めた。

 

 

 

 

我々の祖先は火星人だと

いう説がある。

 

かつて今の地球のように

人類が生活していた。

それも今の地球よりもっと

もっと文明も進んでいたが

その進み方は、明らかに

間違った方向だった。

 

火星上の資源を無駄に

消費し、とうとうオゾン層が

破壊され、温暖化が進み

人類が住める状態では

なくなった。

 

一部の人たちが宇宙船を

作成し火星以外の星に

行こうとした。

2台の宇宙船が用意され

およそ3千人が乗り込んだ。

 

大きな方の宇宙船には

2500人、小さな方の

宇宙船には500人が

乗り込んだ。

 

事前の調査で行き先は地球だと

決めていた。そこは火星から最も

近く水も空気もある。

 

大きな宇宙船は不幸にも

離陸直前に計器類に不具合が出て

航路が予定より大きくずれた。

 

小さな宇宙船は、地球への航路を

順調にたどっていたが、レーダーから

消えた大きな宇宙船と通信は

続けていた。

 

通信スピーカーから聞こえてくる

声は絶望に溢れていた。

 

『金星には人は住めない。

しかし燃料はあとわずか。

我々はこの宇宙船で生涯を終える。

あと、君たちに託す。』

 

やがてスピーカーから聞こえだしたのは

気が狂ったような叫び声と

断末魔だった。

 

地球に向かった500人は

スピーカーのスイッチを切り

死んでゆく人々の無念を

心に刻み新しい星での再起を

胸に誓った。

 

地球に到着した500人が見たのは

荒廃した土地と荒れ狂う大海原だった。

 

水と空気がある。だから

生きることが出来ると

彼らは喜び荒れた土地を

開墾しだした。

 

だが、すぐに食料は底をつき

500人は次々と死んでいった。

 

やがて生き残りは12人になった。

 

残された12人はお互いのDNAに

火星にいた頃の過ちを

インプットした。

もう二度と同じ過ちを

繰り返さないようにだ。

 

やがて12人は神となり

この世を去って行った。

彼らが産んだ子供たちには

火星で起こした過ちが

インプットされていた。

 

特にゼウスと呼ばれた男と

ヘラと呼ばれた女の間に

生れた男の子はアレス、

と名付けられた。

アレスとはギリシャ語で

『火星』という意味だ。

 

我々がたまに日常生活において

 

『あ、これ見たことある!』

 

という時がある。

 

これはデジャヴと呼ばれる。

 

もともとこの言葉はフランス語だが

同じような言葉は古代ギリシャ語で

こう呼ばれている。

 

『火星で見た夢』と。

 

ちなみに被害妄想や偏執病の

ことをパラノイアというが

これは古代ギリシャ語で

こう呼ばれている。

 

『金星での悲劇』と。

 

我々は火星から来たのだ。

 

オゾン層を破壊されそれまで

火星を覆っていた水は酸素と

水素に分解された。

水素は軽いから上空に浮かび

土の上に降りた酸素は土を

酸化させた。だから火星は赤いのだ。

 

と、私は目の前の友人たちに

長々と説明した。

 

この話には根拠はなく

私自身の持論だと付け加えた。

 

 

 

時計を見ると深夜2時を回ったところ

だった。

 

私は自信満々の持論を披露し

周りの感想を待った。

 

 

全員寝ていた。

 

オヤスミ

 

合掌

 

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