362発目 他人と笑いあう話。



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小筆





見知らぬ人ともほんの一つ

共通点があれば、名前を

知らなくても笑いあえる。

 

私はつり革につかまって

正面に座るオッサンを見ていた。

 

やがて駅に着き、どっと

人の波が押し寄せる。

 

私は一つ右側にずれる。

 

と、私の正面が つまり

先ほどのおっさんの左隣の

若者が立ち上がった。

 

私はその空いた席に座った。

 

ふと、先ほどのオッサンを

見ると首を上に曲げて

居眠りを始めた。

 

後頭部を後ろのガラス窓に

あて、真上を見た状態で

寝ている。

 

口をポカンと開け

す~す~と小さな寝息を

立てている。

 

あまりにも見事に口を

開けているので、もしそこに

消しゴムのカスがあれば

入れてただろう。

 

大丈夫かなこの人。

自分が降りる駅で

ちゃんと起きるかな?

 

と、どうでも良い心配を

してしまう自分がおかしい。

 

オッサンは『フゴッ』と、

大きな鼻息を漏らした。

 

その瞬間、それまでは

鳴りを潜めていた鼻毛が

一気にドサっと出てきた。

 

まさに『ドサッ』だった。

 

まるで習字の授業で

名前を書くときに使った

小筆のようだった。

 

つい、笑いそうになったが

その時、オッサンの正面に立つ

女性に気がついた。

 

先ほどまで私が立っていた場所だ。

 

その女性もオッサンの見事な

鼻毛を見て笑いを必死で堪えている。

 

女性と目が合った。

 

私は自分の鼻を指差し、

口だけで声を出さず

 

『こ・ふ・で』

 

と言ってみた。

 

その女性はとうとう

堪えきれなくなり

声を出して笑ってしまった。

 

周囲の人々の視線が

その女性に集まる。

 

女性は私を責めるような

視線を向けてきた。

 

私はその視線を避けるように

下を向いた。

 

やがて私が降りる駅に着いた。

 

その女性も同じ駅だった。

 

ホームに降り立つと

女性が私に近づいてきて

笑いながら話しかけてきた。

 

『笑わせないでくださいよ~』

 

『ああ、すみません。

笑いを堪えているように

見えたのでいたずら心で・・』

 

すると彼女の背後を

先ほどの男性がうろうろしている

姿が目に入った。

 

私は小声で女性に

『さっきのオッサンがいますよ。』

と教えてあげた。

 

すでに女性はオッサンの

小筆じゃなくオッサンそのもので

笑える状態になっていた。

 

『ぷっ。

も~う、笑わせないでください。』

 

『いや、それはあのオッサンに

言ってくださいよ~。』

 

などとやり取りしていたら

オッサンは反対側のホームに行く

階段の方へ歩き出した。

 

そのとき腕に抱えた

オッサンの上着から

黒いものが落ちた。

 

オッサンは気づいてない。

 

女性がその黒い物体に近づき

オッサンに声をかけた。

 

『落ちましたよ。』

 

オッサンは何度も頭を下げ

お礼を言っていた。

 

あ~、面白かった。

さ、行くとするか。

 

と、私は改札のほうに

向かおうとした。

 

女性が私を追いかけるように

近づいてきた。

 

『あははははは。』

 

『どうしたんですか?

まだ、何かあるんですか?』

 

『いや、ひゃははは、

あの、ふふふふふ、ああ、

あっはっはっはっは。』

 

『落ち着いて。』

 

『さっきの、落としたヤツ、

手帳だったんですけど、

おっはっはっは、その

手帳に挟んでたのが

あっはっはっは。

あ~おかしい。』

 

『何が挟んでたんですか?』

 

『ふっふっふっふ』

 

『ふ?』

 

『筆ペンでした!

ぎゃはははは!』

 

『鼻毛じゃなくて良かった』

 

私は見知らぬ女性と

ひとしきり笑いあった。

 

その女性はなんだか今日は

いいことがありそうですね。

と言って立ち去った。

 

改札を抜けると

外は雪が降っていた。

 

 

ハナゲハキッタホウガイイ

 

 

合掌



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