348発目 手柄の話。


ライナーノーツ

誰もが思ってることがある。

 

他人に認められたい。

 

ご多分にもれず私もそうだ。

 

これは私の手柄なのに

誰も気づいてくれない。

 

そういう時に、

『オレがね・・』

とか

『オレはさぁ。』

 

とか言い出しても

誰も聞いてくれない。

 

だから、あの時のあれは

私の手柄だということを

ここに記録として残しておく

ことにした。

 

高校の同級生で集まろうと

いうことになった。

 

新社会人として2年目を

迎えた夏のことだ。

 

メンバーは私を入れて4人。

 

秩父市に住んでいるアイツと

横浜市に住んでいるソイツと

練馬区に住んでいるアイツだ。

 

当時の私は大宮に住んでいた。

 

池袋で飲もうという事になり

待ち合わせ場所を決めた。

練馬区のアイツが分かりやすいから

という理由でJR池袋駅の

東口にあるビックカメラ横の

タカセというフルーツパーラー

が待ち合わせ場所だった。

 

数年ぶりに会う旧友は

みな、それぞれが大人になっており

とても有意義な時間を過ごした。

 

全員が次の日が休みなので

朝まで飲んだ。

 

翌朝、夜が明けてから

電車で移動しなぜか

西川口へ向かった。

 

西川口駅の近くの

ファミリーレストランで

朝食を摂る事になった。

 

ふとしたことで、

佐藤浩市の話になった。

 

『あいつのお父さんって

確か有名な人だったよね。』

 

すると秩父のアイツが

『竜雷太やろ?』

と言った。

 

横浜のソイツは

『いや、違う気がする。』

と言った。

 

私も

『誰かは思い出せないが

竜雷太じゃないことは

確かだ。』

と付け加えた。

 

練馬のアイツは

『思い出せそうだけど

竜雷太しか出て来ん。』

と言った。

 

他の3人も同様に

頭の中が竜雷太で

いっぱいになっていた。

 

全員が佐藤浩市の父親を

考えながら朝食を食べた。

 

『あ~、ここまで出てるのに~』

 

と秩父のアイツは胸のところを

指差した。

 

『まだまだやんか。』

 

と上の空で突っ込んだ。

 

 

結局、誰も思い出せないまま

解散した。

 

自宅に着いた私は出勤前の

女房にこう尋ねた。

 

『佐藤浩市のお父さんって

誰やったっけ?』

 

すると女房は

『あ~なんやったっけ?

峰なんとかやない?』

 

『おお!峰竜太か!』

 

やった。思い出せた!

 

いや、まてよ。

峰竜太は違うな。

あれは海老名みどりの

旦那だ。

 

そうすると今度は

頭の中が峰竜太と竜雷太で

いっぱいになった。

ライターをリュウターと

間違うほどだった。

 

と、そのとき。

 

頭の中に稲妻が走った。

 

三國 連太郎や!

 

私は3人に電話をした。

 

誰も電話に出なかった。

 

それから数週間後、

私たち4人はまた、池袋の

タカセにいた。

 

『おい、オレ思い出したぞ。

あれは三國 連太郎や!

 

すると秩父のアイツが

『いや、俺もあの次の日に

思い出したんよ。』

 

横浜のソイツは

『オレ、あの後さぁ。

峰竜太と竜雷太が

ごっちゃになったよ。

でも次の日に思い出した。』

 

練馬のアイツも

『ああ、オレもオレも。

でも、オレも次の日に

思い出したよ。』

 

よっしゃ。

 

私が一番早いじゃないか。

私が思い出したのはあの後すぐだ。

 

『オレはみんなと別れた後に

思い出したぞ。』

 

『なあんだ、じゃあ

みんな思い出せたんやね。』

 

横浜のアイツがこの話は

これで終わりだとでも

いうように話をまとめた。

 

いいか。

 

よく聞け。

 

あのとき4人の中で

一番最初に思い出せたのは

他の誰でもない。

このオレだ。

 

このオレ様だ!

 

ああ、何て私は

 

ウツワノオオキイオトコ

 

合掌

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