347発目 我慢ができない話。


ライナーノーツ

テーブルをこつこつとペンの

先っぽで叩き、彼はこう言った。

 

『目的がぼやけてるんだよ、

目的が。そもそも何が

一番大事なんだよ!

プライオリティはどうなってんだ?』

 

彼が言うことももっともだった。

 

そもそも1か月前に立ち上げた

プロジェクトメンバーが

週に1回集まってミーティング

を重ねた結果としては

粗末なものだった。

 

メンバーたちは、一つの区切りとして

今日、上司に報告しに来た。

 

ところがけちょんけちょんに

けなされた。

 

それもそうだ。

 

プロジェクトメンバーの

誰もがこのプロジェクトの

成功に対し懐疑的だった。

 

当然、そんなあやふやな態度で

立ち向かってもいい物など

出来やしない。

 

メンバーの誰もが上司の言葉に

目が覚めたようだった。

 

ただ一人、ヤマシタだけは

違っていた。

 

プロジェクトメンバーは

入社5年目の男性と入社3年目の

女性二人に新入社員のヤマシタを

含む3名の男女の合計6名だった。

 

ヤマシタはただ一人、先ほどから

自分たちを叱咤している上司の

口元を見ていた。

 

プロジェクトメンバーの中でも

周囲に溶け込んでないというか、

5年目の先輩にもタメ口をきくし、

5人が同意したことに一人だけ

意を唱えるヤマシタは、ある意味

空気が読めてない部類だった。

 

歯に衣着せぬ言動が原動力と

言っても良かった。

 

ヤマシタはそんな自分の役割を

分かっていたし、変なところで

自信家だったもんだから

その上司に対しても、

我慢が出来なくなった。

 

で、

 

 

ついに言ってしまった。

 

 

『あのう。さっきから

気になってるんですけど。』

 

『お、なんだ?ヤマシタ

言ってみろ。』

 

『お昼ごはん何食べました?』

 

『へ?』

 

『前歯にニラがくっついてたのが

さっきのプライオリティの件(くだり)

あたりから見えなくなったんすけど。』

 

『へ?』

 

『ニラだから、もし外に

飛ばしてて誰かにひっついたら

きちゃないでしょ?

いや、ニラじゃなくても汚いけど。

それに俺、さっき正面におったし。

飛んだニラが付くとしたら

俺だと思うんすよ。』

 

『へ?』

 

『会議の前には口を

ゆすいできた方がいいっすよ。』

 

翌日の朝礼で、ヤマシタは

プロジェクトメンバーから外された。

 

ナンノプロジェクトダッタッケ?

 

合掌

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