271発目 B地区の話。


成田空港

成田空港に降り立ったとき

機内で最後のアナウンスが

我々にこう告げた。

 

『本日は空港で避難訓練のため

非常時放送が流れますが

気にしないでください。』

 

タラップを通り国内線への

乗り継ぎカウンターを目指す。

 

ほどなく館内放送が聞こえてきた。

 

『防災訓練です。

現在B地区にて火災発生。

消防班は至急B地区に向かうように』

 

おお、なるほど本格的だな。

 

と、こちらにも緊張感が走る。

 

B地区ってどこだ?

この近くかな?などと

他愛のない会話をしながら

本来の目的である乗り継ぎ

カウンターを探す。

 

『防災訓練です。

B地区にてけが人が発生。

救護班はB地区へ向かえ』

 

模擬訓練とはいえ

B地区は一体、どんな惨状に

なってるのだろうと

想像をめぐらせる。

 

ふと、あの子の話を思い出した。

 

高校を卒業して以来だから

25年ぶりだったか?

久しぶりに会った彼女は

離婚をし、女手一つで

息子を育てるため

現在は正社員で働いていると

私に近況を話してくれた。

 

『小学校や中学校に給食の

材料を配達する会社なの。

 

私はそこで決められた地区を

担当してて、どの車をどの学校に

何時ごろ向かわせるかを

決める仕事なの。いわゆる

配車係よね。』

 

なるほど、重要なポストだね。

責任も重大じゃないか。

 

私は首肯して話の先を促す。

 

『でね、朝 会社に行くまで

自分の担当地区って分からないの。

朝礼で主任から今日の受け持ちは

どこどこ地区ですって言われるわけ。』

 

問わず語りというのだろうか?

まだ先がありそうで私は

結末が知りたくなる。

 

『で、どういうわけか私は

B地区の担当が多いのよ。』

 

ほう、仕事の悩みか?

 

『B地区って範囲が一番広くて

一番大変なの。

で、朝礼のときに主任が

君は一番大きなB地区だよ

って私を指名するの。』

 

うん、信頼されてるんだね。

 

『違うの。

なんだか、その言い方だと

私の乳首が大きいみたいに

聞こえるの。』

 

大きなビーチク。

 

おい!

 

二十数年ぶりにあって

久しぶりに交わした会話が

ビーチクの話かよ!

 

ビーチク カイデー

 

合掌

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