247発目 名は体を表さない話。


ライナーノーツ
札幌市営地下鉄東西線は

今日も満員だった。

 

乗り換え主要駅の一つである

大通駅に電車が進入したのは

朝の8時過ぎ頃だった。

 

ホームに入り電車の扉が開くと

我先にと降りようとする人は

以外にも多い。

 

すごく太った女が人ごみを

押しのけ出て行こうとした。

 

『ちょっと、押さないで

こけるでしょ!』

 

と、図々しいことをほざいている。

 

私は耳を疑った。

 

押しているのはあんただろ。

 

注意をすべきだっただろうが

私もそこで乗り換えて別の電車に

乗る必要がある。

こんなところでトラブルに

巻き込まれるのはゴメンだ。

 

黙って太った女に道を譲る。

 

と、突然、私の後ろから

野太い声で

 

『押しとるのは

あんたやろ!

そんな太った体なんか

少々押したってこけへんわ!』

 

早口の大阪弁でまくしたてる

おばちゃん。

 

太った女はキィっと

おばちゃんを睨み付け

去って行った。

 

私の横で電車を降りエスカレーターに

乗ろうとしていた男性は

誰にも見えない位置で

小さく拍手を送っていた。

 

私も心なしかホっとした。

 

気分を入れ替え電車を乗り換える。

 

そこからは二駅だ。

 

会社の最寄り駅に着き

階段を上がり地上へと出る。

 

出てすぐのところに信号があり

私は青信号を待った。

 

後ろに人の気配がする。

携帯電話で誰かと話している。

 

『私の事太ってるって言うのよ!』

 

どうやら怒っているようだ。

こっそり振り返ると

先ほどの太った女だった。

 

この近くに勤めているのだろう。

首のところに名前の入ったカードみたい

なものをぶら下げている。

 

~実際に太ってるよ~

と言わないだけの礼儀はある。

 

『私の事 押しても転ばないって

言うのよ。もう腹が立ってさ。

変な大阪弁のおばちゃん。

うん。うん。』

 

先ほどの事態を誰かに伝えているのだろう。

 

首から下げたネームプレートを

見てみると名前が見えた。

 

細田さんだった。

 

ナマエマケ

 

合掌

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