245発目 誰だお前という話。~告白~


チイサナコイノモノガタリ
オワリを呼び出したムライは
名古屋でのヒロモリとの話を
興奮気味でオワリに話した。

最後まで黙って聞いていたオワリは
本人に確認しようとユイに電話をした。

 

待ち合わせの場所はユイが
指定してきた。
札幌市中央区の南端にある
中島公園だった。

公園の入り口にほど近いところで
待っていた二人はお互いに無言だった。

やがて現れたユイは無言でベンチに座ると
桜を見上げながら語りだした。
本当のユイが病気で亡くなったところまで
話して、手にした缶コーヒーを飲んだ。

その内容は、壮絶なものだった。
にわかには信じがたい話だった。

『ってことは君は本当は
ミキさんなんだね?』

『そうなの。
嘘をついてごめんなさい。
ユイちゃんが亡くなってすぐに
私は北九州のあなたの家を
訪ねたの。
そうしたら東京の大学に進学するため
お部屋探しに行ってるって
お母様に言われたわ。
それで私も急遽東京に引っ越すことにしたの。
育ててくれたおじさんとおばさんは
寂しくなるから嫌だなって言ったけど
ユイちゃんの願いをかなえるためだと
言ったら許してくれたわ。
でも結局東京でもムライ君に近づく
きっかけがなくて困ってたの。
その後、あなたが札幌に転勤したから
私も後を追うように札幌に来たわ。

偶然ってすごいわね。
居酒屋で隣に座ったオワリさんが
ムライっていう同じ福岡出身の
男が取引先にいて仲がいいって
話をしてるからもしかしてと思って
話しかけたら本当に本人なんだもの。

やっと会えたわ。

私はこの数年間、ずっとあなたを
探していたの。

オワリさんに部屋探しを頼めば
必ずあなたと話す機会が
ある。そう信じてわざわざ
引越しまでして。

でもそれは余計だったわね。

オワリ探偵の勘が鋭いから
私の簡単な嘘がばれちゃった。』

『最初から本当のことを話して暮れたら
よかったのに。』

『でもねムライ君、まだあなたに
話してないことがひとつだけあるの。』

『なに?』

『ユイちゃんは村井君、あなたのことが
大好きだったの。
地獄のような日々を過ごしているときも
そこから抜け出してあなたに
会えなかった日々も、病気で
何本も注射針を刺していた
ベッドの上でも。
ずっとずっとあなたを想っていたの。

ムライ君、大好きだよ。』

そしてこう続けた。

『私からもムライ君、あなたに
伝えたいことがあるわ。

当時いじめられていたユイを
かばってくれて本当に
ありがとう。』

3人は日が沈んでいく
藻岩山を見ながら
ただ無言で涙を流していた。

 

チイサナコイノモノガタリ

合掌

長い間、ご愛読いただき
ありがとうございました。
オチが無くてがっかりした方も
いるかもしれませんが
今、不幸な人もいつか
幸せになってねという私の願いの
こもった作品になりました。
拙い文章で読みにくかったでしょうが
最後まで本当にありがとうございました。

~完~

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