244発目 誰だお前という話。~展開~


ライナーノーツ
父親の部屋のベッドに横になり
洋服を脱がされたミキは
父が満足してその行為を
終わらせるのをじっと待った。

抵抗することもなく、怒りや
悲しみもなく、ただじっと
天井を見つめていた。

父はママには内緒だよ
と釘を刺したが、そんなこと
言えるわけが無いと思った。

その日から、父は時にはミキの部屋、
時には自分の部屋に呼び出して
何度も何度もミキの体を舐めまわした。

ミキの精神はやっとのことで
均衡を保っていたが、いよいよ
限界に近づいた。

ある日、またいとこのユイが
学校でいじめられたと言って
泣いていたのを見て決心した。

『私達が幸せになるためには
後、数年我慢が必要よ。
ユイちゃんと私が中学に
上がったら決着をつけよう。』

 

年齢の割りにしっかりしたミキを見て
ユイはただただ羨ましいばかりだった。
そのミキから現状から抜け出す方法が
あるが今はまだ小学生だから駄目だと
言われた。
それでもユイはこの地獄から抜け出せるなら
何でも待てると思った。

ところが事態は思わぬ方向へ
傾き始めた。

父親の会社が倒産したのだ。
学校から帰ると母親が荷物をまとめていた。
『あの男は終わったわ。
あなたも今から自由よ。
勝手にしなさい。』
そう言って待っていた家庭教師と
出て行った。
父親には連絡が取れない。
しばらく呆然としていたら
銀行と名乗る大人が数人やってきて
ここにはもう住めないから出て行きなさい
と言われた。
途方にくれたミキはユイに連絡した。

ユイは快く受け入れた。
が、自宅に呼ぶとあの男が
何をするか分からない。
しばらく考えていたが
特に良い案が浮かばぬまま
ミキがやってきた。
荷物はボストンバッグひとつ。
あの男と母親はまだ帰宅してない。
とりあえずアパートの隣の
おばさんに事情を話して
母親が帰ってくるまで
部屋にいさせてもらった。

隣に住むおばさんは
二人を迎え入れると
ユイにこう訪ねた。

『あなた達、私の子供に
ならない?』

おばさんは隣から聞こえてくる
ユイを折檻する声をいつも
胸が締め付けられる思いで
聴いていたそうだ。
いつも、あの子が私を頼ってきたら
助けてあげようと思っていたそうだ。

ユイは泣いた。
ミキも泣いた。
そして二人はおばさんの
申し入れを受け入れた。

おばさんは早速、博多に住む
おばさんの弟に連絡を取り
今夜引っ越しましょうと
提案してきた。

その日のうちに
荷物をまとめ電車で博多に
向かった。

おばさんの弟もとても良い人で
ミキとユイの二人を快く
引き受けてくれた。

学校に通うためにも
住民票を移す必要があり、
おばさんの子供だということを
証明する必要がある。

ところがこの顔が全く似てない二人は
生年月日が同じだったので
姉妹という訳にはいかなかった。

そのため二人はおばさんと
おばさんの弟のそれぞれの
子供ということにすることになった。

弟さんは知り合いを頼って
偽の戸籍謄本を作成し
養子縁組をしたうえで
二人をそれぞれの娘として
育てることになった。

ところが手続きの途中で
手違いでユイとミキが
入れ替わってしまった。

その後、ユイはミキとして、
ミキはユイとして生活しだした。

まるであの地獄の日々が
嘘だったかのように月日は
流れた。

高校を卒業するころ
ユイは突然吐血し
入院することになった。
おばさんもおばさんの弟も
とても心配した。
病名は胃がん。
それも末期の症状で
助かる見込みは無いとのことだった。

病室のベッドでユイは
『おじさんとおばさんの子供になれて
ユイはとても幸せな人生だった。
ありがとう、本当にありがとう』
と涙を流した。

そしてミキにひとつお願いが
あると言った。
ミキは泣きながらユイの
手を握りユイの願いを聞いた。

次回
カンドウノラスト

合掌

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