231発目 中2病の話。


ライナーノーツ

『そこに山があるから登るんです』

とは、有名な登山家の言葉。

 

我々は時に仲間内で

さまざまな情報や財産を

共有しあう必要がある。

それは、素材であったり

ネタであったりもする。

 

では、その話と登山家の

言葉とどうつながるのだ?

と皆さんのいぶかる顔が

目に浮かぶようだ。

 

自分が中学2年生のころを

思い出してみた。

 

部活もそこそこに、お目当ての

山を目指して自転車を飛ばす。

私一人ではなく仲間も一緒にだ。

 

当時の同級生、特に同じクラスの

仲間達は、誰か一人が

”エロティックな本”を持っていたら

それはクラスの全員が

所有しているのと同じ意味を

持っていた。

いわゆる情報の共有だ。

もちろん、財産の共有でもある。

 

連帯意識とかチームワークとか

そういうことではなく、

本能からくる行為だった。

 

1冊の”エロティックな本”が

教室中を駆け回り、やがて

誰もが見向きをしなくなるころ

誰がと決めたわけでもないのに

誰かが山へ登ろうとする。

 

その山は竹林といっても良いくらいの

どちらかというと小高い丘くらいの

レベルではあるが、ふもとまで

自転車で行くと、そこからは

徒歩で目的の場所へ向かう。

 

ノブが見つけてきた”穴場”だ。

 

そこには常に誰かが捨てた

”エロティックな本”が放置してある。

 

登山家達は目的の場所に着くと

そこに放置された何冊かの

”エロティックな本”を物色し

クラスの誰もが喜ぶであろう

獲物を手に下山する。

 

翌日からは出席番号順に

その財産または情報は

共有され始める。

 

冬も近づき始めた晩秋のことだ。

その日は私とノブが登山家として

竹林へ向かった。

 

お目当ての場所で、お目当ての

獲物を手にした我々は

その財産、もしくは情報を

最初に閲覧する権利が

与えられる。

 

家に帰るまで待てない。

 

ふもとの神社の鳥居の下で

自転車にまたがったまま

獲物を食い入るように

閲覧する私とノブ。

 

集中していた。

 

だからおじさんが近づいて

来たのも気づかなかった。

 

突然、おいっと声をかけられ

かなり驚いたことを覚えている。

 

おじさんは我々にこう尋ねた。

 

『お前らさっきそこから下りて来たやろうが?

あそこはおいちゃんの山ぞ、

勝手に入って何をしよったんか!』

 

ノブは冷静におじさんに向かい

こう答えた。

 

『そこに山があるから登ったんだ』

 

中学2年生とはそういうものだ。

 

さあ、中学2年生の男子をお持ちの

お母様方よ。

 

どうか息子の部屋に入るときは

必要以上にたくさんのノックを

してから入って欲しい。

 

もしかすると彼らは

自分の部屋で順番の回ってきた

獲物を閲覧しているかもしれないから。

 

アア、オトナニナリタイ

 

合掌

 

注;ノブをご存じない方は
『ノブ』というキーワードで
タグをつけているので
検索してみて欲しい。

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