187発目 そっと失礼する話。


ライナーノーツ

よだれのメカニズムは
一般的に大きく3つあると
言われている。

そのうちのひとつに
寝ているときにウッカリ
垂れてくるよだれがある。

よだれ【涎】
口の中から垂れ流れるつばき

寝ているときに垂れるのは
鼻で呼吸せずに口をあけて
いるため口内が乾燥し
それを補うためによだれが
分泌するということのようだ。

写真の八坂神社は京都の
有名な神社だ。
24歳のときに旅行で訪れ
荘厳な雰囲気と長閑な
時間の流れ方のギャップに
痛く感動した。

あれだけの数の参拝客が
いるにもかかわらず、時間だけは
ゆっくりと流れている、そういう
感覚になる。
うっかりすると眠たくなる。

参拝を終えて、玉砂利の
敷いてある広いところに
出てきた私と連れは、
歩き疲れたこともあり
ベンチに腰を下ろした。
天気もよく、うっかりすると
眠たくなる。

正面から一組の男女が
歩いてきた。
我々の方を見ながら微笑を浮かべ
近づいてくる。
いや、よく言えば微笑で
悪く言えばニヤついている、だ。

ベンチに座る我々の前に
スッと立つと男性のほうが
口を開いた。

『あなた方の幸せをお祈り
させてください』

聞くと、参拝客を対象に
お祈りしているらしい。
暇だったので、まあいいかと
快諾した。

ベンチに座る私達の前で
両手を合わせ頭を下げている。
女性のほうがブツブツと
何かをつぶやきだした。

私達はじっとその様子を
軽く見上げるように見つめた。

しばらくすると、男性の方から
何かが地面に垂れだした。

よだれだ。

私達は顔を見合わせ
こっそりと耳打ちした。

『寝とるぞ、こいつ』

なんだか胡散臭くなったので
こっそりと立ち上がり
その場を後にした。

鳥居の所まで来て振り返ると
二人はまだお祈りを続けていた。

鼻で息をしてないんだな。

八坂神社にはベンチに向かって
お祈りを続ける男女が一組。
ゆっくり流れる時間とお経のリズムに
眠たくなったんだな。
その後、その光景が名物に
なったとか、ならなかったとか。

マサニ

合掌

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